第8話 理解の早さは取り柄なのかも
翌朝。
なんだか外がやたら騒がしい。
俺は固い床で眠ったせいで強ばった上半身を起こした。
「ハヤテ遅い!」
寝ぼけた目を擦ると、ミリィが腰に手を当てて呆れ怒っている。
「もうみんな外の様子見に行ったわよ。アンタも早く準備して」
「あ、ああ......。あー、準備できたわ」
そりゃそうだ。なぜなら俺が準備するものは己の身一つだ。
「そ。じゃ、行くわよ」
あれ、もしかして待っててくれたのか?
外に出るとすぐにテオ、レブラン、リッカの3人が慌てて走ってきた。
「ミリィ、大変!」
「どうしたのよ、そんなに慌てて」
「レイズベリー城が魔物の軍団に襲われてる!」
「なんですって!?」
「さっきレイズベリーの兵士が傷だらけでこの村に逃げ込んできたの。きっと今ならまだ間に合うわ。助けに行きましょう!」
レブランは特に必死の表情だ。
「なあ、そのなんちゃらベリーっちゅうのはそんなに大事な場所なのか?」
のほほんと尋ねる俺。
「レイズベリーはレブランの故郷なの。行こう、ミリィ」
「そうね、行くわよ!」
テオの呼び掛けに、ミリィが意気軒昂と答えた。
なんだなんだ、次から次に。
俺は襟首を引きずられるようにして駆け出した。
(ど、どこなんだそのなんちゃらベリーは.....)
結局ほとんど半日以上走り通しで、なんちゃらベリー城の見える小高い丘に着いた。
見れば確かに、洋風の城にこの世のものとは思えぬ異形の者共が群がっている。
空を飛ぶ者、地を這う者、叫ぶ者、嗤う者、泣く者、歌う者、踊る者、なんだかよく分からない者......。多種多様な生態系だ。その多くが人型、或いは虫型ないし獣型及び分類不能型をしており、さらには体の大小、色、ツヤ、形、なめらかさなど様々で、恐らく食した場合の味や食感もそれぞれ異なるであろう(決して食べることはないだろうが)。
「間に合った! まだ大丈夫。助けられる!」
美しい横顔を汗まみれにしているレブランが、自分に言い聞かせるように叫んだ。確かに散発的ではあるが、数少ない城兵が決死の反撃を試みている箇所もある様子。
「オッケー! いい、ケイタ? 行くわよ!」
なんだかあれほど小憎らしかったミリィが妙に勇ましく見える。とは言え、相変わらず俺は何を求められているのかよく分からないが。
そもそも「行くわよっ!」つったって、ロクな衣服すら与えられない上、徒手空拳の俺にどないせーっちゅうのか。
ふと視線を移すと、リッカが黒い大きな瞳で俺を見上げている。
「今度も頼みますね、ケイタさん」
前言撤回。やっぱすぐ分かったわ。
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