きっとこの恋は、世界が終わっても忘れないof the Dead
髭眼鏡
第1話
転生してまず初めにしたことはは、ここがどの世界か、を確かめることだった。
目に付いた携帯端末を起動。日本、と入力して検索。この時点で俺が使用している言語は日本語である事は確定。結果は……ヒット。
良かった、どうやらここは日本であるらしい。
俺自身が日本語話者だとしても、ここが日本であるという確証は、こと転生物に関してはないからな。
日本の歴史に関して記載されているページを斜め読みしていくが、殆ど俺の知っている事柄と相違はないようだ。
というか、ここ完全に元の世界なのでは?
そう思うほどに何の変化もない。
だが、間違いなくこれは転生だ。それだけは間違いがない。なんせ俺はついさっき死んだばかりだからだ。
なんて事はない、通り魔に刺されたのである。
いや、俺自身にとっては充分大した事、どころか人生一の重大事件な訳だが、しかし転生物の導入としてはありきたりなきっかけである。ありふれた死に様だ。
段々と自分の血が身体から無くなっていくのを感じながら、力を失って、そうして意識を失った。そうして次に目が覚めたら、鏡の前で立ち尽くす男に転生していたのだった。
目鼻立ちのくっきりした、可愛らしい少年。ともすれば少女にも間違えられそうなほど整った顔をしている。
「これ、現実か……?」
慣れない声が耳朶を打つ。自分の声なのに自分の声ではない。例えようもなく気持ちの悪い感覚だ。体の寸法もあっていないから、フラフラと頼りない足取りになる。
「
一瞬で頭の中に叩き込まれた情報が、俺にこの体がどういう人間だったかを思い出させる。死んだ俺とは全くの他人。だから俺はこれをタイムリープではなく転生と断じざるを得ない。
「そうか……」
拳を握り締め、しばらく鏡の前で立ち尽くして、俺は記憶を頼りに自室に戻ることにした。先程までの俺は元気に外に遊びに行こうとしていたらしかったが、今の俺にそんな気力はない。
トボトボと階段を上がってすぐの扉を力なく開く。
「あれ、あんた遊びに行ったんじゃないの?」
すると隣から声が聞こえて来た。少年の記憶から、姉の
「ちょっとお腹が痛くなって」
顔を合わせたくなくて、俺は適当に理由を言って部屋に引っ込んだ。
「ふう」
バタン、と力なくベッドに倒れ込む。何せ死んだばかりなのだ、元気などあるはずもない。
「これからどうしようか……」
目的も目標もない人生ほど、無意味なものはない。前世のように流されるまま無為に生きて、ゴミクズのように無意味に死んでいく、そんなクソッタレな人性を繰り返すだけだ。
そんなのは、もうたくさんだ。
少しでも意義を、生きていた証を、人生の意味をこの世界に刻みたかった。どうせ死ぬなら、俺は確かにここに居たんだ、って胸を張って死んでいきたかった。死を経験したからこそ、そんな思いが俺の中で沸々と湧き上がってくる。この転生は、そんな俺の心残りが起こした奇跡のような物だろうか、なんて馬鹿げた想像までしている。
いや、あながち的外れでもないのかもしれない。あいにく神様には会ってはいないが、前世の俺を憐れんで次の人生をプレゼントしてくれたのかもしれない。
だとしたら。
神は最低のクソ野郎だ。
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