1−4村と釣りとギアクラフト

目を覚ますと、目の前には小さな村が広がっていた。妖精のリリル村


木造の家がいくつも並び、道は土が踏み固められている。家々の間には畑が広がり、野菜らしき作物が風に揺れている。煙突からは白い煙、朝の光を受けて村全体がどこか温かく見えた。


「……のどか、だな」


俺は釣り場から少し歩いた丘の上に来ていた。昨夜はフィリカという妖精少女と会い、スキルを試した。だが、この世界での生活を考えると、まだまだ準備が足りない。


背後から「おーい!」という声が聞こえ、振り返るとフィリカが小さなカゴを持って駆けてきた。


「おはよう、ユウ! 朝ごはん持ってきたよ!」


「おお、ありがとう。助かる」


中には小さなパンと、干し果物。どうやら村でとれたものらしい。


「この村、名前はあるのか?」


「リリル村」っていうんだよ。人も少ないけど、みんな優しいの」


フィリカはそう言いながら、カゴを差し出す。その笑顔を見ていると、ここでの生活も悪くないと思えてくる。


◆ ギアクラフト、実用モードへ

朝食を済ませた俺は、村の外れにある小さな水辺へ向かった。昨夜試した《ギアクラフト》、今日はもう少し本格的に使ってみようと思ったのだ。


「よし、まずは……テント、いってみるか」


両手を構え、釣り用具ではなく、キャンプ用テントを思い描く。風に強く、防水で、折りたたみ可能なやつ。


《スキル:ギアクラフト Lv.1 発動》


しかし、思ったのとは違う不器用な家みたいな、ものができてしまった。何かがおかしいだけどそれが何かはわからない。やっぱりものは試しだ



そして、数分後



《スキル:ギアクラフト Lv.1 発動》


淡い光が地面に広がり、ゆっくりと形が浮かび上がる。……できた。


「……おぉ、ちゃんと組み立て式だ。中も狭くない」


素材は魔法布のようで、軽く、意外と丈夫そうだ。これで寝泊まりも安心できる。


続いて、俺はもう一つ必要なものをイメージした。


「次は……調理道具だな。しかし、MPを使いすぎている。コツは掴めたものの過労死しちまうぞおい」


「だから、これでラストにする!」


カセットコンロの形状を思い描く。魔力で火を灯せる、風にも強く安全なもの。


ピシィン、と音を立てて現れたのは、金属製の小型ポータブルコンロ。横に鍋とフライパン、サバイバルナイフも付いてきた。


「これで、釣った魚をその場で焼ける。いいじゃん……はぁはぁ」


便利すぎる。ギアクラフト、想像以上だ。


◆ 村人との出会いと、これから

その後、フィリカの案内で村を一回りした。


木工職人の老人が手を止めて「珍しい顔だな」と話しかけてくる。畑の世話をしていた老婆は、俺の釣竿をじっと見て「その竿、光ってるねぇ」と目を細めた。


人々は警戒するよりも、むしろ好奇心をもって接してくれる。


「ユウって、旅の人なんでしょ? この村にしばらくいるの?」


「そうだな。……釣れる水場もあるし、今のところ、悪くない」


「へへっ、ならよかった」


フィリカが笑う。俺も、つられて笑ってしまった。


◆ そして、今日の一本

その日の夕暮れ、村の近くの池で再び竿を構える。


《アトラクトフォース》を使ってみると、すぐに水面が揺れ始めた。


ギュン!


竿が大きくしなる。慎重にリールを巻いていくと、出てきたのは──見た目は鯛に似ているが、体に花が咲いたような不思議な魚だった。


「……なんだこの、花のタイみたいなやつは……?」


魚語トークバスターで声をかけると、「オイシイヨ、タベテネ」と返された。


……お、お前、自分で言うか。少し申し訳なさと残酷さが感じられる。


俺は吹き出しそうになりながら、花タイを丁寧にさばいた。そして、さっき作ったコンロで焼き上げる。


香ばしい香りがあたりに漂う。ひとくち、口に運ぶと──


「……うまっ」


フィリカも横で目を輝かせている。(もちろん分けているからな。)


こうして俺の、異世界スロー釣りライフは、少しずつ、形になっていくのだった。




名前:海堂悠かいどう ゆう


レベル:3


職業:釣り人


HP:100

MP:120

筋力:10/敏捷:11/知力:14/感覚:16/幸運:???


【スキル一覧】

釣具創造ギアクラフト Lv.1

水場支配ウォーターフィールド Lv.1

ルアーアトラクトフォース Lv.1

食材釣り《クッキングキャッチ》 Lv.1

魚語&ツッコミ融合トークバスター Lv.1



【持ち物】

・木の釣竿(自作)

・虹色フック

・魔法の釣り糸

・折りたたみ式テント

・魔力式コンロ

・魚図鑑ノート

・干し果物(フィリカから)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る