第2話 花蓮の不安

前田さんは悠太に小さい声でありがとうと何回も言っていた。

その声、表情は恋をしている乙女に他ならなかった。


 では他に案のいる人は?


凜々花は淡々と言った。



誰も手をあげない。

前田さんがこんな状態になって、意見を言える人などいるはずがない。

そのまま半強制的に私たちはメイド喫茶をやることになった。


 次は役決めです。とりあえず仕事は料理、メイドor執事ですね。

 では役職を決めていきたいと思います。


凜々花は黒板に役職と人数を書いた。

 メイド:10

  執事:10

  料理:10


彩夏は沈黙の空気を切り裂くように言った。

 とりあえず~私と由愛と、凜々花と花蓮はメイド決定ね!


他にもやりたい人がいるかもしれない状況で言った。

クラスの女子は誰も言い返せず、黙っていただけだった。

凜々花が口を開いた。

 他にもやりたい人いるかもだから待ってて。


口を開いたのはきっと委員長としての対場を守るためだろう。

クラスの女子が凜々花の声に希望を覚えた時

由愛が言った。

 え~でも~...このクラスで一番かわいいのこの4人じゃん?www


彩夏も続けて

 確かに言えてるぅ~wwこのクラスブスばっかだよね!ww


反論はできなかった。

確かに彼女たちはクラスの誰より可愛い。

言い返したら論破されてイジメられるだけだ。


 はいはい、黙っててください。他にやりたい人ー。


誰も手をあげなかった。


 ....じゃあこの4人は決定で。


その後はくじ引きやじゃんけんで役職が決まっていった。

由愛たちはクラスの後ろの鏡でメイクを直していた。

前田さんやクラスの女子に心で心から謝った。


クラスの女子のテンションが低いことは誰しもが理解していた。

しかし前田さんだけテンションが高くなっていた。


彼女は授業が終わり次第、悠太の所に駆け寄り頬を赤らめながら何度もありがとうと言い、他愛もない会話をしていた。

悠太に助けてもらったことを嬉しく思い恋をしているようだ。

ただ違う悠太は人を助けたりなんてしない。

どちらかというと人をイジメて笑うタイプだ。


前田さんは中休みも昼休みも友達とは食べずに悠太を誘って二人で屋上で笑いながら食べていた。

由愛たちについてきてと言われお昼ご飯を食べている二人を見に行った。

由愛と彩夏は笑って


 前田ってホントにバカだよね~


と笑っていた。

その時分かった。由愛と彩夏は前田さんで遊んでいるんだ。

悠太も協力者だろう。

凜々花もか...?


 ねぇ花蓮~明日の放課後予定空けといてねぇ~


教室に戻って帰りの準備をしていた俺に花蓮が話しかけた。

少し笑いながら怪しい顔で言ってきた。


 明日?いいよ


俺は何をするのとは聞かなかった。聞きたくなかった。

彩夏がやった!と座っていた机からジャンプし、俺の方を見て言った


 本当に面白いから期待しててね~♡


ニヤニヤしながら前田さんの机を見た。

これで確実だ前田さんに何かをする。

それは今日の前田さんに対する悠太の態度に関係しているだろう。


その時、悠太のポケットに入っている白い封筒を目にした。

まさか......


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


俺は重い足取りで集合場所に向かった。

学校の裏庭だ。

そこにはもう由愛と彩夏と凜々花がいた。

由愛は小声で


 花蓮~こっち~静かにね~


といった。

静かに小走りで行き、彼女らが見ているところを見ると。

風でまっている桜の木の下で前田さんが悠太の事をじっと見つめていた。

前田さんの顔は真っ赤に染まっていて、上目遣いで悠太の事を見ていた。

悠太が口を開く。

 で、どうした?呼び出して、

前田さんが口を開く。

 あの時、私を助けてくれたじゃないですか、それで、、


前田さんは口をもごもごとうごかし、決心を決めたかのように言った。

 悠太君のこと好きなんです!付き合ってください。

彼女は告白した。


悠太は空気を吸い込み笑顔でこういった。


 俺じゃ全然釣り合わないよ。他の人を探した方がいいよ。


前田さんは悠太を見つめて言った。


 悠太君にはいいところがあるよ!顔もスタイルも性格も頭脳も!!!


悠太は笑いながら言った。


 だからだよ。釣り合わないんだよ。


前田さんは驚いたように口を小さく開けた。


 お前は頭も普通だし、ブスだし、センスもないし、スタイルも悪いし、顔大きいし、声キモいし、臭いし、キモいじゃん。大体陰キャと一軍が釣り合うはずないじゃん。バカなの?


前田さんは静かに涙を流していた。

悠太はにやにやと笑って由愛に合図した。

すると由愛と彩夏と凜々花が悠太の所に行った。

俺も小走りで彼女たちのもとへ行った。


前田さんは彼女たちを睨んでいた。私も恨んでいるんだろう。

彩夏が口を開いた。

 前田さんてばちょー面白かったよwwwあんな下手な悠太な演技に騙されるなんてバカすぎ~www


由愛も続いて

 どう~?好きだった人に悪口言われるの~どんな気持ち~?www


前田さんは涙でぐちゃぐちゃになった顔で悠太に言った。

 嘘...だよね?

彼女はまだ信じていた。

 はぁ?俺がお前を好きなはずないだろ。俺は花蓮みたいな可愛い子が好きなんだよ。


そういい俺の手を掴んで手の甲にキスをした。

俺は口から悲鳴が出そうだった。

彼は俺が男だという事を知らない。


前田さんは俺を睨みつけ、家に帰っていった。


あっははははははははははwwwwwwwマジ面白かった~wwwww


彩夏は腹を抑えながら口を大きく開けて笑っていた。

由愛もニヤニヤしながら走って帰る前田さんを見つめていた。

悠太は俺の手を掴んだまま前田さんを笑っていた。

凜々花はふっと笑いながら前田さんから目を逸らした。

俺はどこを見ればいいのか分からず。悠太とつないでいる手を見つめていた。


彩夏が一通り笑い終わると

由愛と彩夏がニヤニヤしながら近づいてきた。

俺は驚きながら後ずさりをしていき、後ろ向きで凜々花にぶつかった。


 wwwねぇ花蓮~驚きすぎ~


ニヤニヤしながら彩夏が言う。

由愛が口を開いた。


 ねぇ花蓮~パパ活してみない?


花蓮は笑いながら話してきた。


 別に本番はするわけじゃないよ~お話だけ!

 そうだよ、パパに写真見せたら連れてきて~言われて~

 今日は乱こ....パーティー!パーティーをする予定だから!


俺は自分の手を見た。

俺は男だ。女だ。

行為はしない。

お話だけ。

お金がもらえる。

家は貧乏な方だ。

お話だけでお金がもらえる。


 ....いいよ


俺は口を開いた。

その瞬間。彼女らの口が綻んだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 今日はここらしぃ~デカ高級ホテル


由愛がスマホを見ながら言った。

彩夏がニヤニヤしながら嬉しそうに小さく跳ねた。


俺はこれから男性たちと会って、おしゃべりをするだけだと自分に言い聞かせた。

しかし意識とは裏腹に手は軽く震えていた。









  

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