ヘンゼルとグレーテル~魔女の真実
山下ともこ
第一章:森の民の記憶
かつて、森の奥深くに“魔女の家”と呼ばれた家がありました。
今では朽ち果て、石と灰だけが残るその跡地には、
春になると白い小さな花がひっそりと咲くのでした。
魔女の家があったとされる森の近くには小さな村があり、
村の中央には少年と少女の象が立っていました。
象のプレートには「村の英雄・ヘンゼルとグレーテル」と書かれていました。
村人たちは言います。
「昔、あの森の奥には人喰いの魔女がいたんだ。
子どもをさらい、太らせ、最後には食べてしまう恐ろしい女だったそうだ。
けれど、ヘンゼルとグレーテルが魔女を倒し、村に平和を取り戻してくれたんだ。
ヘンゼルとグレーテルは村の英雄なんだよ。」
けれど、ヘンゼルとグレーテルの子孫達は、また違う話をするのです。
「本当は魔女なんていなかったの」
「子どもを太らせたのは…」
「あの白い花はね…」
村人達の話が本当なのか、
ヘンゼルとグレーテルの子孫の話が本当なのか、
真実を知る者は、もういません。
森を吹き抜ける風は、時折村まで、甘く優しい香りを運んで来ます。
まるで誰かが、「真実を探して…」と囁いているかのように──。
続く~第二章へ~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます