第2話 日常2

「失礼します。黒月様」

「ん?どうしたんだい」

ここは新宿の地下、古びたカラオケの地下3階。中では今新宿内を騒がせている「薬」の開発をしている。

「売人がまた行方不明となりました」

「また一二三か…でもいつものことじゃ無いか。僕に話すにはインパクトが足りないんじゃないかい?」

白衣を着た黒髪の男は、部下の男にそう聞いた。

「それが…防犯カメラを見た所、金髪の男が話しているだけなんです。会話中に売人が…」

黒髪の男が防犯カメラを除く。何かに気づくと男はニヤッと笑った。

「ふーん…この子の事調べといて」

「かしこまりました」

部下の男は直ぐに自分の研究室に戻って行った。

「幽霊を操っている…。家計能力か…それとも…面白い子だね」

黒髪の男は、口を大きく広げて笑った。彼の名前は黒月天人。新宿区に自殺者を増やした張本人である。

舞台は変わり学校へ戻る。

「量君!」

教室で昼食を取っていると三神が隣に座ってきた。

「三神か。何の用だよ」

「もちろんお昼を一緒に食べにきたんだよ♡机くっつけるね」

三神は少しあざとくお弁当を持ち上げ、前の椅子に座る。

「そういえば最近部活はどうなの?話聞かないけど」

「…知らない」

「…勉強はどう?」

「…あんまり」

三神は少し困ったように俺に話しかける。なんで俺に話しかけてくるんだコイツは。

「そういえばちょうど明日だよね」

「…あぁ。それについて話に来たんだろ?」

三神は眼鏡を掛け直し、頬を赤らめながら俺に話した。

「明日で私達が死んでからちょうど1年だね」

そうだ。去年の夏、この学校で集団自殺が起こった。そして何故か俺だけが助かった。理由は今も分かっていない。

「お前も死んだんだよな…なぁ?…三神真実」

「…そうだね」

そう、俺以外。つまりは俺の目の前にいる三神真実も死んでいる。でも俺には三神以外のクラスメートや教師もまだ見えている。人数は少なくなったが確かに見えているんだ。死んだ闇異が取り憑いた瞬間、俺には幽霊が見える程度の霊感が身についた。

「でも…お前の身体は人間のままだったよな。家柄のせいだろ?」

「知ってたの?流石だね」

三神真実の実家は新宿でも有名な寺だった。そしてこいつの家には色々噂があった。

「お前の爺ちゃんの代からイタコを雇い始めていたって」

「うん。しかも凄腕の。そのイタコに死んだ私の魂を戻してもらったの。だからほら」

三神は急に制服を脱ぎ始めた。

「おっ、おいおいおい!やめろ!脱ぐ…な?」

三神の顔は白く綺麗だった。だが、身体は傷だらけだった。

三神は照れながら、グルッと身体を一周させた。

「身体だけはあの時のまま。自殺した時のまんま。だから身体もボロボロ」

三神のヒビだらけの身体に窓からの夕陽が美しく照らす。その身体を俺は隠す様にあの時と同じ言葉を吐いた。

「隠せよ。俺以外にその身体を魅せるな。例えこの夕陽にも見せたくはないよ」

三神は赤面し、すぐに制服を着た。

「量君はずるいよね。無関心なふりしてそんな台詞言っちゃうなんてさ」

ナルシストばりのダサい台詞だった。でもこれは本心で、三神はそれに気づいたらしい。

授業が終わり、俺は自宅を無視し、新宿に向かった。闇異の腹の音が鳴った。

「「お兄ちゃん…お腹空いたよ」」

「あぁ…待ってろ。どうせこの街にはたらふくいるんだ」

闇異と話していると早速いた。血だらけのナイフに地雷系の格好。大方推してたホストに騙され、殺してきた後だろう。

「闇異。食って良いぞ」「「いただきますお兄ちゃん」」

闇異の口が裂け、女を頭から咥える。しかし何かに反され、闇異が吹っ飛ぶ。

「おい!闇異!どうした!!」

「「お兄ちゃん…何かおかしい…同じ匂いがする」

匂い…?いや前にも一回あった。あの時は必死に逃げたが…こいつは幽霊だ。

「…」

無言の幽霊が、俺達にナイフを突きつける。

「闇異が跳ね返って…闇異以上に強いヤツか…」

幽霊が俺達に襲いかかってくる。逃げたいが、闇異をこのままにする訳にも行かない…。

「万事休すか…」

ナイフを振りかぶり、血が一滴したたる。悪いな三神…闇異…俺はここまでらしい。俺は闇異の身体を抱きしめ、目を瞑る。

「諦め良いねぇ!モテるだろ君!」

声が聞こえた。そして次に目を開けた瞬間その幽霊は知らない女にぶん殴られ壁に叩きつけられ気絶していた。

「上級幽霊か…。やっぱり新宿は多いねぇ!」

黒髪に黄色のブリーチをした、まるで虎の様な女がそこには立っていた。

「君のその幽霊……君達面白いぃねぇぇぇ!!」

女は悪魔の様に俺達に怪しすぎる笑顔を見せていた。

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新宿ベルゼブブ ベニテングダケ @oojamiuo

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