第13話 領都襲撃

ロクジー殿に見送られた後、我々は無事に街まで戻ることができた。


そして報告書をギルドへ提出し、夕飯がまだだったのでパーティー全員で行きつけの飯屋へ向かう。


「リーダー、ロクジーさんのことってギルドには報告したの?」


「いや、していない。態々あんな危険なところに住んでるし魔力無しということも合わせると人から知られたくないと思ってね。恩を仇で返すわけにはいかないさ。」


あれ程の力を持っていながら魔力無しだったとは。もちろん完全に信じた訳では無い。だが嘘でも本当でもどちらでも良いと思えた。


あの時あの場で見せられた力は本物だ。そしてその力によりパーティーの命は守られたのだ。


必ずこの恩は返さなければならない。そう思っていると突如門の方から爆音とともに人々の悲鳴が聞こえてきた。


「アンデットの群れがせめて来たぞー!」


「門を閉めろ!そこのお前!急いで城に向かって応援を呼んでこい」


「クソッ!リッチまでいやがる!ここにいる兵だけじゃ止められないぞ!」


「いてぇ、いてぇよ...」


飛び交う怒号に痛みにもがく声、そして物言わなくなった死体。たったの数秒で平穏な日常が地獄へと変わった。


そしてまだ締め切っていない門にアンデット共が群がる。


すごい数だ。下手しなくても1000体以上はいそうだ。対してこちらは迎え撃つ準備が出来ていない上に、兵士が数十人しかいない。


数の差が圧倒的すぎた。急いで城から追加の兵士を連れてこなければまずい。


しかし間に合う筈もない。狭い門を囲うように兵たちが展開してアンデットと衝突する。


「押し返せ!絶対に通すな!」


「おら!これでも喰らえ!な、次から次へと------グウェッ」


アンデット共は武装しており、装飾はされてないもののしっかり整備された槍を持っていた。


通常、アンデットが自分から武装することはない。統一された武装をしている事も加味して明らかに何者かによる襲撃だということがわかる。


武器の性能はほぼ互角。だが、流石に訓練されてるだけあって兵士たちが優勢だった。アンデットの放つ突きをいなし、お返しとばかりに次々とアンデットを処理していく。しかし数の前では焼け石に水でしかなく、次第に押され始める。


このままでは街にアンデットが流れ込んできてしまうので、助太刀することにした。


「死守だ!死守しろーー!」


「我々も助太刀します」


アリスが回復魔法を唱えジュディが爆発魔法でアンデット共を吹き飛ばす。そしてゴードンと共に下がった戦線を押し返す。


「すごい!流石A級パーティーだ!」


「これなら持ちこたえられるぞ!」


場に希望が生まれた、その時だった。爆発音と共にアンデット共が溢れ返る。その中には領軍の制服を着たものもいた。


「ああ、嘘だ、何で城が落ちてるんだ....」


「敵は一体何処から...まさかアンデット共、穴を掘って?」


そうしている間にも領民が噛まれてアンデット共の数が指数的に増えていく。


後ろと前を敵に囲まれた。皆が絶望している中で街の方から同じ紺色ながらも領軍とは少しデザインの異なる集団−−−−−帝国国軍が出てきた。


「な、ここにもアンデットが!」


「反対側の門に行くぞ!こんな埃臭い田舎で死ねるか!」


噂には聞いていたが柄が悪い連中だ。今も守るべき国民を押しのけて我先に逃げようとしている。


その時だった。突如空から氷、雷、土、炎、水、5大属性それぞれによるアロー系魔法が国軍へと降り注いだ。


空を見上げるとそこにはまだ二十歳もいっていなそうな白髪の少女が氷に乗って空に浮かんでいた。


「手始めにゴミ掃除からだ。貴様らが私たちにした報い、受けてもらうぞ」


少女は恨みと侮蔑がこもった目で地上を見下ろし、そう呟いた。

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