第7話 目覚め

 「夢、か」


ここに来るまでの経緯を夢で見た。そしてこのロフシーも。


人格と記憶が融合したてでただなんとなくこの世界が俺にとって生きにくい世界だと思っていたが、やけに臨場感のある夢のおかげで自分自身の置かれた現状を再認識する。


強くならなければ。スローライフとか安全だとかそういったものは一先ず捨て置いて。


ゾンビにも、ミュータントにも、軍隊にも理不尽を強いられないだけの強さが必要だ。


幸いなことに俺事ロフシーの肉体は、はっきり言って優秀という範囲に収まらないくらい卓越している。人間と言うよりすこぶる運動神経の良いゴリラと言われたほうが納得できるくらいには。


物心ついた頃にはこうだったので、おそらく生まれたときからそうだったのだろう。


親がいないので俺以外の血縁者が俺と同じ能力を有しているのか、はたまた突然変異で俺独自の特異な能力なのか分からないが、肥溜めみたいな環境の中でこの才能を持たせて産んでくれた両親に感謝している。


閑話休題。


とりあえず自己鍛錬に励む前にこの建物内の安全を確保しよう。


そうして俺はナイフだけを手に取り、1階から虱潰しに各部屋を開け、中にいた住民ゾンビを処理していく。


危なげなくすべてのゾンビを処理していくと、屋上に続くドアの前で立ち尽くす。


「ふぅ~」


ドアをちょっとだけ開けて外の様子を伺う。


すると−−


「アゥ?」


いた。黒い羽毛に赤い大きな目。鳥のような見た目をしているのになぜかクチバシには人間のような歯がある。


口は半開きになっていてぬちゃっと生暖かそうだ。


そんな大きな怪鳥を前に、俺が取った行動は---


「おらぁぁぁー!死ねや!」


ドアを一気に開け二足で距離を詰める。そして飛び上がり、左目を切りつける。


「ガァぁぁぁ!!!」


振り下ろすために首を振るが、羽毛を掴み振り下ろされないようにする。そして右手に掴んだナイフで先ほど斬りつけたところを何度も突き刺す。何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。


そうして傷口を深くしたら右手を突き手で差し入れ、怪鳥の大事なところ---脳みそを握り潰す。


これで建物内の安全は完全に確保できた。


お次は死体の片付けだ。屋上はもちろん8階から2階までいた奴らの死体を窓を開けて落としていく。


これにてお掃除完了だ。


返り血で汚れた服は捨て、住民たちから奪った着替えを持って一階のシャワー室に行き、体をキレイにする。


ガスは通っていないので冷水だが、前世ぶりのシャワーなので大変気持ちがいい。


入浴を終え食事を取ると、筋トレしようと思ったが、ここであることに気付く。


「5階に住むより電気がある1階に住んだほうが良くね?」


そう、そうなのである。1階ならシャッターを全て下ろしてあるので光が漏れる心配もないし、おまけに何より電気が使える。


そうと決まれば荷物を1階へと移すことにした。1階はフロントとスーパー、管理人室がある。おれはこの管理人室の中に併設されている仮眠室で生活することにした。


仮眠室といってもワンルームにキッチンとシャワー、そして洗濯機とトイレもある。


俺は貧乏性で広い部屋が嫌いなので、これくらいが丁度良いのだ。


こうしてスローライフっぽくなってきたことにテンションを上げつつ、明日のためにもう眠ることにした。

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