第3話 いただきます。

 最悪の目覚めの後、ボロ布で吐瀉物の掃除をしてこれまたボロボロの引き出しから食料を取り出す。


「缶詰とパンか...」


デザインが簡素でよく分からないが、書いてある絵からしておそらく中身がコーンビーフであろう缶詰と、引き出しの中に直置きされてた硬そうなパンを食べる。


どうやら前世同様今世の歯茎と顎も頑丈にできてるらしい。


鈍器として使えそうなくらい硬いパンも物ともせずバリバリボキボキ食べてく。


当然のども乾くので水を溜めてある桶から木のコップで水を掬い、ゴクゴクと飲む。


そうして食べながらふと考える。この世界についてだ。


ロフシーと融合して得た記憶によると、この世界では封建制度的な国家・集団が乱立しているらしく、貴族、王族、部族といった者たちもいるらしい。


らしい、と言うのはロフシーが実物を見たことなく、実際にどんな感じなのか分からないからだ。


そもそも俺はどうやら誰ともつるむことがないあぶれ者だったらしく、一人で生きてきた。


だからぶっちゃけこの世界のことを語れるほど詳しくない。


ロフシーもボッチなんだな、と仲間を見つけたみたいで少しだけ嬉しくなる。


 この世界について考えた結果、自分自身にあまり知識がないということを把握した後、次は自分の現状について考える。


どうやら俺は街のに登録されていない貧民だったらしく、今はスラムを抜け出て一人で生活しているという状況らしい。


俺みたいなをもたない者は結構いて、その末路は悲惨なものだ。奴隷、臓器ドナー、人体実験。帝国に連れて行かれた奴を何人も見てきた。


....なんというか倫理観がない文明レベルに対してデータを保管できる技術力があるというのはチグハグな印象を受ける。


おそらくだが過去に科学力が高い超文明があって、何らかの理由があって滅び、今はその科学力の残滓だけが残っているというのが俺の推測だ。


超文明が滅びる世界怖ッと思いつつ、食事が済んだので立ち上がり窓の向こうをみる。


緑に浸食されたコンクリートの人工物。割れたアスファルト。


クシャクシャになった車。街の向こう側にあるあまりにも大きすぎる大樹とその下にある広すぎる森。


そして何より---


地面を大量に蠢くゾンビ。何をしてるのか分からない赤い肌を持ったデカい人型のバケモノ。


ゾンビを上空から掴みとりどこかへ行く歯茎がある気味の悪い怪鳥。


ポストアポカリプスな世界を前に、街で暮らせない自分の出自を恨んだ。

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