03. 本性に気付いた夏(1)
家の前に
その海沿いの町の一区画には、十二軒くらいの家の前に、そうした「小さなお寺」が毎年一日だけ現れる。
高校三年生の夏――最後の夏休みに、隣町の果てにある村を訪れたとき、この光景を目の当たりにした。友達の
「盆休み」というには
「おれも小学生のときは、がっぽり
「じゃあ、あの箱の中のお金は、子供たちがもらえるんだ。全額もらえるの?」
「うん。小学生には似つかわしくない高収入だよ。一日鐘を鳴らして……ほとんどは、涼んだりしているけど、そうしてれば、二、三万円くらいもらえるんだから」
康太とそんなことを話しているうちに、木造の二階建ての立派な門構えの家に着いた。松の木が黒々とした影を大通りに落としている。門をくぐって飛び石の上を踏んでいく。
左手は庭になっていて、
「遠くからわざわざ来てくれてありがとう」
康太の姉の
ポットのなかで、氷を浮かばせながら
立方体の透明なゼリーのなかには、
「ちょっとお手洗いに……」
そう言って康太は部屋を出ていってしまい、大学二年生だという優子さんとふたりきりになってしまった。
「受験勉強はしなくていいの?」
「ぼくは、就職をするつもりなので」
「ふうん……そうなんだ」
優子さんはエアコンを止めて、窓を開け放った。二階のこの部屋に、涼やかな浜風が迷いこんできた。
「こっちにきて」
手招きをする優子さんの顔は、優しい笑みを見せてはいるものの、どこかぼくを
「ここからの景色は綺麗なのよ。
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