第6話 RNA

世の中には写真うつりのよい、いわゆる「フォトジェニック」なひともいるのに、じぶんはどうしてこうも「実際に思っている自分」よりも醜くうつるのだろうとつねづね、ランは思っていた。「修正すればいいじゃん」そういう問題ではない、と思う。くわえて、写真のなかのランはよく目をつむっているのだ。「目を閉じてるって、あるあるじゃん」いや、普通のひとより頻度が高いのだ。

あるとき、そのときつきあっていた映像作家―ふつうのひとより被写体にむきあう、注意する機会の多い―がランの写真を撮ろうとして言った、「ああ、普通のひとよりまばたきの回数が多いんだ」。そう言われて注意してみると、Zoomやスマホでのビデオ通話でしゃべっている自分をみていると、たしかにほかのひとよりひんぱんにまばたきしている。しかしこればかりはどうにもならぬし、瞳の保湿にとってもわるいことではないのではないか?それでもどこか、いごこちのわるい思いをしていたのだが、カッと目を開いて死んでようやく、ランはまばたきのことを気にしなくてよくなった。

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