第2話 新しい一歩は、仕事探しから

「……では次の方〜」


受付カウンターのお姉さんに呼ばれ、私は小さく深呼吸してから一歩を踏み出した。

自分の家族が酷すぎて、人当たりの良さそうな綺麗なお姉さんに会えたことにほっとする。



場所は王都中央ギルドの求人窓口。

私は平民のミーナとして、仕事を探しにきた。

ギルドとは、冒険者や傭兵、商人、職人、使用人まで、あらゆる職種が斡旋される民間の就職支援機関だ。



理想は、自立した生活と、しばらく実家に見つからないこと!そのため、家族の目を盗み街へ出て、住み込みでできる仕事を探しにきた。

着られる服の中でもましなものを着てきたが、ボロすぎて浮いていないだろうか。念のため、顔を見られないようローブを着て、フードを目深に被っている。



実家と元婚約者から見つかりたくない私は、正直に話せることが少ない。優しそうなお姉さんに申し訳なく思いつつ、受付用紙に、自分の名前、特技、希望職種などを書いていく。


特技といえば、強いていえば家事全般?

実家で働かされていたお陰で、私は掃除、洗濯、料理一通りできる。普通の貴族令嬢なありえないことだろう。


……空白が多いな



住み込み・食事付き・すぐ働けるところという希望を最後に書き込み手が止まったタイミングで、お姉さんが話しかけてくれて助かった。



「ミーナさんね。私はリサ、よろしくね。…住み込み希望ね」

(この子所作が綺麗で、フードから垣間見るお顔は綺麗、ちょっと痩せすぎな気もするが、きっとどこかいいとこのお嬢様よね?そうよね?訳ありかしら?訳ありだわ)



「はい。事情があり、家からは離れて暮らしたく……働ける場を探しています」

(離れて暮らしたい、それは本当だ汗。身元不明でどうか断られませんように)


「そうね〜。少しお待ちくださいね。はい!登録は完了しました。すぐ紹介できそうな職場がありますよ。」

(きっとこの歳で苦労しているのね、お姉さんにまかせて。いい仕事を見つけてあげるわ。そうそうあの仕事。)



「今掲示板に張り出されている、厨房の仕事はどうかしら?条件を読んで、働きたいと思ったらまた声をかけてね」


リサさんはカウンター右手にある掲示板を示しながら教えてくれた。


「中央騎士団付の寮厨房で、いつも人手不足でね。料理の腕は問わない、ただし人柄と真面目さ重視。寮もあるから住み込みで働けるわよ」


私は掲示板の募集要項を確認し、再度カウンターに向かい働きたいとお姉さんに伝えた。


「それじゃあ、この紹介状をあげる。これを持っていってね。新しい門出を応援してるわ」



「リサさんありがとうございます。」



家族からは久しくかけてもらえなかった優しい言葉に、思わず涙が出そうになる。


「それと、面接には団長自ら立ち会うらしいわよ」


団長? と一瞬、耳を疑い、社畜OL魂により涙が引っ込む。たが、文句は言っていられない。

私は紹介状を受け取ると、その足で指定された場所へ向かった。

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その獣人騎士、無自覚に私を甘やかしすぎです! @cyori_23

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