彼とラケット一振り

My

第1話

私、髙田綾。

髙田財閥の一人娘。

いつもなら、かの有名な白百合女子中等部に執事の琥珀が車で送ってくれるのだけれど、、、。

「なんでよりによって今日、車が故障するのよー!」

私は今、普段車で通っている道を爆速ダッシュ中。

まさかの車が故障して。

それに私も、普段より遅い時間に起きた。

琥珀も今、体調を崩して、実家に帰っているし。

まあ、理由は十分ある。

ダッシュしつつ、カーブに差し掛かったその時。

ドンッ

誰かとぶつかってしまった。

「ご、ごめん。怪我はない?」

そう言いながら、手を差し出してくれたのは、背が高く、男子校で有名な坂上桜学園の制服を身に包んだ、イケメン男子だった。

「だ、大丈夫ですわ。ありがとうございます。

でも、傍になさらず。では、失礼致します。」

そう言ってその場を後にしようとした。

すると、その男子が私の腕を掴んだ。

「あの!そのラケットって、バドのラケットですよね⁉︎」

「え、あ、はい。そうですけど、、、」

そう言うと、彼は、顔を輝かせて言った。

「シングルスですか?ダブルスですか?」

「シングルス、、、」

私がそう言うと今度はもっと顔を輝かせた。

何なんだろう、この人は。

「じゃあ、今日、髙田財閥の家へ行くので、僕が試合で勝ったら、ダブルスを組ませてください!」

「何ですって⁉︎」

私はとても驚いた。

私に告白してくる人は度々いたけれど、一緒にダブルスを組ませてくださいと、言ってくる人は初めてだ。

「俺、瀬戸内皇子です!」

そう言って、彼は行ってしまった。

変な人。

私はそう思って、また学校へと駆け出した。



ギリギリ学校に着いた私は、一限目の授業を受けていた。

だが、それどころではない。

まさかあんな人がこの世にいたなんて。

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