お母さんへ
お母さん、私はあなたが好きです。
恋という感情が色欲だけでないのなら、私はあなたに恋をしています。
離れている時間が、胸が締め付けられるように寂しい。
たまらなく、あなたに会いたい。
二十四時間三百六十五日あなたのそばにいることは難しいことですが、できる限りあなたと共に過ごしていたい。
だから本当は、あなたの職場にもついて行きたいくらいなのです。
その優しく微笑みかける天使のような笑顔。
白い肌と柔らかい二の腕。ずっと触っていたい。
そして体型を気にしながらも少しも痩せようとしない図太さ。尊敬します。
子は母を選んで生まれてくると言いますが、これは本当のことだと常々思います。
なぜなら私は、このお母さんがいい!とはっきり確信した覚えがあるからです。
そんなにはっきりは覚えていませんが、それだけは知っています。
ああ、寂しい。早く会いたい。そして、あなたに触れたい。
この前、「寄生獣」という映画をあなたと見ました。
その時のことを覚えていますか?
あなたは寝ぼけていて知らないと思いますが、私ははっきり覚えています。
「寄生獣」の真似をしてあなたは、「ぶんっ」と言いながら腕を赤ちゃんのようにして振っていました。
ああ、なんと可愛らしい。
何度思い出しても、愛おしさが込み上げてきます。
もう一つあります。
だいぶ昔のことですが、突然あなたを見失い、私は必死で探していました。
すると、なんだか訳のわからない行列に、吸い寄せられるように、あなたは並んでいました。
その姿が、なんと可愛かったことか。
私はあなたの流されやすさや愛想の良さ、人の良さを身にしみて感じていました。
他にも、可愛いと思ったところは星の数ほどあります。
あなたを愛しいと思えば思うほど、寂しいと思う心は拭えないのです。
私の幼少期なんて父にさえ嫉妬していました。
母は私より父の方が好きなのかもしれない、と。
今では私も大人になり、そんなことを思うことは無くなりましたが、離れている時間を寂しいと思うことは増えました。
こんなことを綴った手紙を見たらあなたは、「可愛い子だねえ」と言って笑って誤魔化すでしょうが、私の気持ちは本気なのです。
だから、これを見せてあなたの受け取り方を薄れさせるわけにはいきません。
ある意味この手紙は自分のために書いていると言えます。
とにかく、私はお母さんのことが好きであり今現在も寂しいと感じていることを証明したかっただけなのです。
一日中仕事の日はいいですが、午前だけ休みの日とか、本当はやめて欲しいです。
あなたに会うとずっと一緒にいられる期待値が高まり、抑えきれなくなるのです。
私が寝ている間に仕事に行くとか、気づいたらいなくなっているとか、そっちの方が断然いいです。
早く帰ってきてください。
娘より
こいぶみ れもんのいれもん @koihamoumoku
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