第二章 三人の王子の決断
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時は、カシュアが塔を出される少し前までさかのぼる。
クーデターの一夜が明け、王太子エドワードを含めた三人の王子が、それぞれの役目を終えて『謁見の間』に集合した。
「入り口に立て札でも置いたほうがいいんじゃない? 『かつて玉座があった場所』とかね」
三男のマイヤーは、やれやれと辺りを見回す。時代錯誤で悪趣味な装飾品の残骸をよけて歩きながらも、その表情は晴れやかだ。二人の兄同様、簡素なシャツとズボン姿でも、亜麻色の髪ときらめく青い瞳によく似合う洒落たデザインで、美意識の高さがうかがえる……たとえその衣が、三人の誰よりも血しぶきで汚れていたとしても。
「だいだい想定どおりの結果です。特に老朽化が進んだ本宮殿は、そろそろ大規模修繕が必要でしたので、ちょうど取り壊す手間が省けました」
次男のバージルは、こんなときでも冷静に屋内の損壊状態を把握しており、けして冗談を言ってるつもりはない。先代国王の浪費により、国庫の台所事情はかなり厳しい状況だ。もう何年も前から、極端に言えば物心ついたころから、国の行く末を憂いていた。
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