戦力強化


「やはりお前だったか。リラ」


「教官!!! 生きていたんですね!!! 無事でよかった!!!」


「教官? リラさん。彼は知り合いですか?」


 リラさんは彼の正体を確認するやいなや、涙を流し、机を超え彼に抱きついた。

 俺達は突然のことに困惑しつつも聞かなければならないことを聞くことにした。


「ええ。私が特殊部隊としての訓練をしていた時の教官なの。最近引退してのんびりこの都市で余生を過ごしていると聞いていたから……もう死んでいるものとばかり」


「これぐらいで死ぬほど弱い存在ではない。犬の群れが襲いかかって来た時は危なかったがな」


 彼はそう言うと長袖で肌が隠れていた左腕を見せてくる。

 最近ついたであろう引っかき傷があり戦闘の過酷さと、あの犬相手に立ち向かい勝利した彼の強さが伺えた。


「ああそうだ名乗ってなかったな。俺はジャックだ。よろしくな」


 彼の手はまるでクマのように大きく、トラックのような力強さを感じた。







 その後は互いの情報を交換。まあ交換と言っても向こうは大した情報は持ち合わせていなかった。

 だがそのかわりの収穫は手にした。ジャックさんが持っていた大量の物資を手に入れることができた。


 どうやら特殊部隊の教官を辞めたあとも武器を大量に保有していたらしく、暫くはトリガーハッピーしても問題ない量の銃と弾薬を手にすることができた。

 医薬品や食料の類は近隣から集められるだけ集められていた。


 移動に何度か警察署とジャックさんの家を交互に行き来することになったが、お陰で暫くの間は耐えることができそうだ。

 戦力が増えたのも大きい。次はもう少し遠くの場所に行けそうだ。








「よいっしょっと!!! よし。これで全部だな」


「これで暫くは耐えられますね。」


「ああ。だが俺は負傷のせいで今日はもう動け動けない。……すまないな」


「アレはしょうがないわよ。むしろ全滅することなく情報を得れただけでも私達の勝利よ」


「……すまねえな」


「そういえばA班はまだ帰ってこないのか?」


 既に日は暮れかかっている。だが未だにA班は戻ってこない。


 最悪の事態が全員の脳内にチラつく。俺達も大量の動物ゾンビに全滅されかけたのだ。   そう考えるのは当然と言える。








 だがその心配は杞憂だった。日が完全に沈んだその時、ようやく彼らは帰ってきた。



「遅れて済まない。A班は全員無事だ。何人か負傷者がいるがな」


「隊長! ご無事で何よりです! こちらの班は情報は入手できませんでしたが大量の物資と新たな生存者を発見しました!」


「それは良かった…。我々の方はヘリにあった全ての物資を持ってくることができた。……だが隊員の何人かが負傷した。皆に連絡をして欲しい。我々は大量の鳥の群れに襲われた。空にも注意に当たるようにと」


「隊長もでしたか! 我々も同じく鳥に襲撃されました。他にはネズミもゾンビとなり襲いかかってきました。現在は警察署周辺の罠を動物用も追加しています」


「了解した。とりあえず怪我した隊員を治療に。その後報告と次の作戦を練ろう」


「イエッサー!」



 怪我が目立つ数名の隊員が警察署内へと入っていく。

 皆一様に疲れた顔をしているが、少しの希望が目から見える。もしかしたら何か良い成果があったのかもしれない。



 あの数なら人手が足りないかもしれないな…。手伝いに行くか。



 俺も隊員達の後を追い、警察署内へと入る。内部では警察と建築業界の人達が共に新たな罠を設置していた。

 少し離れたところではホームレスの人達がシェフに何か話をしている。


「若いの。ここも食べることができる部位じゃよ。生でもいけるし直火で焼くと上手いぞ」


「すぐに腐るものだってこうすれば更に日持ちできる。まあある程度腐っていても俺達は食べるがな!」


「「ガハハハハ!!!」」


「ありがとうございます!これで料理のバリエーションも増えます!」


 どうやら彼らも彼らなりに皆の役に立とうとしているみたいだ。シェフも嬉しそうにしている。


 ミュージャンと手品師は重いものを運んでおり、ヒイコラ言っていた。二人は仲が悪そうでよく喧嘩をしているが何やかんや息が合っている。


 OLのお姉さんは子供に絵本を読み聞かせていた。前よりも少しではあるが、子供の目には生気が宿っている。



 話は変わるがOLとはOffice Ladyの略で「事務員女性」や「会社勤めの女性」の略らしい。

 普通にそういう名前の会社だと思ってた時期が俺にはあった……。




「失礼します」


 医務室の中には傭兵達がごった返している。かなりの数。血と汗の匂いは昔を思い出させてきて嫌いだ。


「何か手伝えることありますか?」


「おお。助かる。そろそろ面倒くさくて薬だけ渡してサボろうか迷っていたんだ」


「ちょ!先生?! それは止めてくださいよ!」


「冗談だ。それじゃあサポートを頼む。包帯は巻けるか?」


「元傭兵なんで簡易的な治療は可能です」


「頼んだぞ」


 女医さんの言葉に従い、彼女のサポートをこなしていく。

 死体に傷をつけられた以上感染対策は必須。かなり時間をかけ、治療が終わった時には罠の仕掛けが終わったらしくほぼ全員が眠りについていた。



「……ふう。お疲れ様ユウキ。後片付けら私がやっておくからもう眠っておくといい。明日も動くんだろ」


「ありがとうございます。それじゃあ……おやすみなさい」


「ああおやすみ」












「………ウウ」


 何か聞こえた。扉を開けようとドアノブに手をかけたとき……確かに何かうめき声のような声が。


「今何か言いました?」


「いや何も。気の所為じゃ」






「……頭…………痛え」


「「!?」」


 ふと女医さんの横を見る。そこには先程まで意識を失い眠っていた男の姿。

 彼は意識を取り戻したのかベットの上で上半身を上げてこちらをボーっと見ていた。






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