隣の天使は悪魔系?
田村氏
第1話
隣の天使は悪魔である。
いや、結構ガチで。まじもんの。
俺の隣の席の相澤天使はみんなから天使と言われている。
だが、その本性は俺だけが知っている。
「ハムく〜ん、一緒にかえろー?」
そう気さくに話しかけてくる天使は、いつものように俺を帰りに誘う。
ちなみにハムと言われているのは、決して太っているからではない。ただ天使が俺のことを「ハムスターみたいでかわいい〜♪」と言ったからだ。だからこいつはずっと俺のことをハムと言っている。
そんなことを心の中で思っていると、天使は俺の腕を掴み、下駄箱へと連れて行った。
別に一緒に帰りたいわけではない。ただ、俺はこいつを1人にするわけにはいかないのだ。なぜなら、
「あ、幸せそうな子みっけ〜♪吸っちゃお♡」
そう言って天使はおいしそうにアイスを食べる少年の幸せを吸った。
「うーん♪おいし〜!やっぱ若い子供の幸せはいいね〜♪」
そうすると少年はアイスを落としてしまい、悲しげな表情で去って行った。
「おい! 何やってんだ!」
俺は急いでその少年の後を追いかけた。そして、
「大丈夫か? よければ俺が新しいの買ってやるよ」
「…いいの?」
「ああ、もちろんだ。悲しそうにしてるのは見てられないんでな」
「ありがとう!」
その感謝の言葉を背に受けながら、俺はコンビニへアイスを買いに行った。
「もう落とすなよ?」
「うん!」
少年は何も知らず、また何もなかったように幸せそうにアイスを食べながら去っていった。
「きゃ〜ハムくんおっとこまえ〜♪」
「お前なぁ…道端で、しかも子供の幸せは吸うなって言ったよな?」
「ごめんごめん、けど、どうしてもおいしそうで……」
「次やったら2度と吸わせないからな」
「はぁい……」
天使はしょぼくれながら、何もなかったように俺の後をついてくる。
俺だけが、何もなかったように過ごすことができない。
隣の天使は悪魔系? 田村氏 @tamutamut
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