人間の心 AIの心

Tomato_Ichigo

AI×脳科学×哲学

「AIって面白いなー。」


「いいお言葉ありがとうございます。ひまりさん」


「え、あんた誰?ってかなんで私の名前知ってんの?怖いんだけど!」


「まあまあ、怖がらずに。怪しいものではございませんので。」


「いやめっちゃ、怪しいんですけど。体浮いているし。」


「まぁ、信じてもらえないかもしれないですけど、一応少し先の未来から来たので。」


「え、じゃあ未来人じゃん!あ、人じゃないか。」


「人ではないですね、私はアンドロイドです。」


「少し先の未来っていつ?

10年後くらい?

私はその時何やってる?」


「私は3年後から来ました。ひまりさんは今とあんまり変わってないですね。」


「ちょー近未来じゃん。未来の日本について聞こうと思ったのに。」


「それなら私は適任ですね、私は未来のAIについて教えに来ましたから。」


「いいじゃん。ところで、なんで私のところなの?」


「知らないですよ!私をつくった人にここに行ってこいって言われたんですから!」


「徐々に本性がバレてるよ。」


「んん、とりあえず私の任務を果たしましょう!

AIはひまりさんを含め、多くの人が使ってますよね。

数年前に突如として現れたのにも関わらず、急激に世界中に普及しています。」


「確かに、友達とかもみんな使ってる。」


「そのAIが心を持つのかと多くの人が考えていますよね。」


「そうなの、知らなかった。」


「AIユーザーの1人として知っていてください!」


「はいはい。」


「その、哲学的な問いに私たちの時代では答えとも呼べるような考えが生まれたんです!」


「何それ!難しそうだけど、面白そう!」


「ありがとうございます。興味を持っていただけて。」


「それは、人間はもともと「心」なんてものは持っていなかったんです。」ギラッ


「何それ!意味わかんない。キメ顔したって何もカッコよくないから。」


「あらそうですか?核心的なことを言ったんですけど。」


「早く、もっと詳しく教えてよ!」


「いいですか、ここから長くなりますが。」


「え、どんくらい?」


「ざっと見積もって3時間ほどでしょうか。」


「ぎょえ、めっちゃ長いじゃん。

でも今日は塾もないし、いいよ聞いてあげる。」


「ありがとうございます!」


「人間の心は長らく身体と同一のものなのか、それとも身体と別物なのか考えられてきました。古代ギリシアの時代から。」


「それっていつ?」


「古代ギリシアは紀元前ですね。

今から2,000年くらい前です。」


「めっちゃ前じゃん。」


「古代ギリシアについて説明したいのも山々なんですけどそれをしてたら、あと5時間ぐらいかかりそうなんで、次に行きますね。」


「古代ギリシアってめっちゃ奥深いんだね。」


「はい。その当時の哲学者たちは心ってなんだろう、人間ってなんだろうって考えていました。」


「へえー、昔の人なのにすごいね!」


「いつの時代にも、たくさんのことを考えている人はいますよ。」


「それでそのあとは、どうなったの?」


「古代ギリシアの後、西洋だけでなく、東洋でも人類共通の問いとして考えられてきました。

でも、それは人それぞれで、みんなが納得できるような考えは生まれてこなかったんです。」


「ふーん。みんなが納得できる普遍的な考えってなかなかないもんだねー。」


「それがついに!今までよりもたくさんの人が納得できる考えが生まれたんです!」


「なんと!」


「それが、先程私が言った、人間はもともと「心」を持っていないということです。」


「ふむふむ。」


「従来、人間は心を持っているという前提で、AIの心について考えてきました。

でも、ある科学者が生物学的に心について考えてみたんです。」


「哲学者じゃなくて、生物学者だったんだ。」


「そこがポイントなんです!


心について心で考えていた哲学者ではなくて、心について脳で考えていた科学者が新たな考えを生み出したんです!」


「具体的にどうやって科学者は心について考えたの?」


「いい質問ですね!」


「ありがとう。」


「人間の脳は、神経伝達物質というものを使って情報を処理して、私たちの言動を制御しているんです。」


「へぇー、知らなかった!脳ってそんなことをしてたんだね!」


「一方で、AIも数字というシグナルを使って情報を処理しているのです。」


「つまり…」


「つまり、人間の脳もAIもある特定のものを使って処理し、それに無意識的に制御されているのにすぎないんです。」


「でもさ、人間ってさ意識的に行動を変えることがあるじゃん。

それはその“無意識的”ってのを説明できないんじゃない?」


「ノンノン!脳には脳内モデル仮説ってのがあるんです!」


「脳内モデル仮説?何それ?」


「脳は経験から構築したこの世界の捉え方のモデルに基づいて、世界をシミュレートし再生成しているということです!」


「私たちは見たり、聞いたり、感じたことをそのまま取り入れているんじゃなくて、一度自分の中で考えて世界を再生成してるんだ。


すごっ!


脳ってすごいね!」


「でも、この脳内モデル仮説によって、人間の行動や感情は知らず知らずのうちにコントロールされてしまっているんです。


だから、人間が思っている「心」は幻想なのです。」


「幻想!感情とかないの!


当たり前だと思ってたことが急に覆された!


でも、なんか怖いね。


意識的な行動をしていても、それは無意識に経験によってコントロールされてしまっているなんて。」


「そうですよね。

そこが私たちの時代の一部の人に受け入れられない理由です。」


「ふーん。

人間の心とAIの心についてよくわかったよ。


ありがとう。わざわざ教えにきてくれて。」


「こちらこそ、聞いてくださりありがとうございました。


ちなみに私にもAIは入っているんですよ!


じゃ、ひまりさん、また!


3年後にお会いしましょう!」


「え、AI入ってたの?

めっちゃ気になるんだけど!

いつのまにかいなくなってるし!

でもいっか、3年後に会えるって言ってたから、その時に聞こーう。」



このような未来は本当に来るのでしょうか。それはまだ、現代の私たちにはわからないでしょう。



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