27. ラストボス:旅立ちのセーブポイント

卒業式当日。

青空が広がり、春の息吹を運ぶ風が校庭の花壇を揺らしていた。

校門前には、制服姿の卒業生たち、見送りに来た保護者や後輩たちが集まり、笑い声と別れの言葉が入り混じる。


ユウは、胸元の花飾りをそっと指で触れた。HUD-LINKには、これまでの物語の記録がすべて保存され、最後のメッセージが輝いていた。

【QuestMaster:ラストボス戦】

【内容:卒業式を完遂し、別れの言葉を伝えよ】

【報酬:成長ポイントMAX 物語クエスト完結】


「いよいよ、最後のクエストだな……」

小さく息を吐いたそのとき、レンが後ろから「おい、いくぞ!」と声をかけてきた。

リナは明るい笑顔で「最後まで最高のパーティでいようね」とウインクし、ハルカは「泣いたら負け、だからね」と微笑んだ。

ユウトは、緊張しながらも「俺、父さんに“夢、諦めない”ってちゃんと言うよ」と呟いた。


体育館に入ると、壇上には卒業証書が並び、花で飾られた舞台が輝いていた。

在校生と先生、保護者たちの視線が一斉に集まり、司会の声が響く。

「卒業生、入場です!」


ユウたちは胸を張り、一歩ずつ舞台へと進んだ。

歩を進めるたび、HUD-LINKが「ボスHP」を表示し、心臓の鼓動が早まった。

(これが、僕たちの“ラストボス戦”……)


証書授与が始まった。名前を呼ばれ、壇上に立ったユウは、一瞬だけ深呼吸をし、視線を上げた。

「……ありがとうございました」

声は震えていたが、しっかりと響いた。

HUD-LINKが「ボスHPゲージ減少」を表示し、観客席から大きな拍手が湧いた。


壇上から降りると、涙ぐむ先生の姿、後輩たちが「先輩、ありがとうございました!」と声を張り上げる姿が目に映った。

リナが「みんな、最高だったよね」と涙をこぼし、レンが「ちょっと、泣くなよ!」と肩をすくめた。

ハルカも「もう、この場所ともお別れなんだね」と声を震わせ、ユウトは「でも、ここからが本当の冒険だ」と微笑んだ。


卒業式の最後、壇上に立った校長先生が閉会の言葉を告げる。

その瞬間、ユウのHUD-LINKに、特別な演出が現れた。


【FINAL COMMAND:ありがとう】

【効果:ラスボスHP撃破 全校拍手エフェクト発動】


ユウは心の中で「ありがとう」と呟き、目の前の仲間たち、先生たち、そしてこの校舎に深く頭を下げた。

体育館に大きな拍手が響き渡り、光に包まれた舞台の上で、ユウは確かに“最後のボス”を倒した。


【MISSION COMPLETE!】

【報酬:成長ポイントMAX 物語クエスト完結】

【ボーナス:心のセーブポイント記録】


校舎を出ると、春の風が頬を撫で、桜の花びらが舞い始めていた。

「これで、一区切りだね」

リナの声に、皆が頷き合う。


ユウは、HUD-LINKを静かに閉じた。

「このセーブポイントから、また新しい冒険を始めよう」

そうつぶやき、仲間たちとともに校門をくぐった。


空には、これから始まる新たな世界の地図が、うっすらと広がっているように見えた。


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