卒業式の翌日。

昨日まで賑わっていた校舎は、静寂を取り戻していた。

教室には誰もいなくて、机と椅子だけが整然と並んでいる。けれど、その無人の教室には、確かにあの時の声や笑顔の残像が漂っていた。

「……終わったんだな」

ユウは窓際の席に腰を下ろし、窓の外に広がる青空を見上げた。

心の奥で、昨日の卒業式を思い返す。壇上での答辞、仲間たちと交わした視線、拍手、そして別れの瞬間。

すべてが夢のようだった。けれど、その夢はちゃんと現実で、心の中に刻まれていた。

その時、HUD-LINKが小さな音を立てて起動した。

画面には、新たなミッションが表示されていた。

【QuestMaster：POST GAME】

【内容：卒業後のサイドクエストを進めよ】

【ミッション例：家族に感謝を伝える／先生に挨拶する／思い出の場所を巡る】

【報酬：感謝ポイント＋30　記憶スキルLvアップ】

「……そうだ、これからも“クエスト”は続くんだ」

ユウは立ち上がり、教室を後にした。

まず向かったのは、職員室だった。

「先生、これまでありがとうございました」

ユウは深く頭を下げ、先生は「こちらこそ」と微笑んだ。

その一言で、胸の奥がじんわりと温かくなる。

次に、校庭を歩いた。

ポスター作りに奔走したあの芝生、宝探しをした商店街を望むフェンス、夜の屋上。

一つひとつの場所に、仲間たちとの思い出が刻まれている。

リナは家族と一緒に、校門前で記念撮影をしていた。

「ユウ、お疲れ！」

彼女の笑顔に、ユウも「ありがとう」と応えた。

レンは後輩たちに「サッカー部、頼むな！」と声をかけ、ユウトは静かにアルバムを見つめていた。

ハルカは理工学部進学の資料を手に、研究への期待に胸を高鳴らせていた。

ユウのHUD-LINKには、それぞれの「サイドクエスト」が達成されるたびに、達成報酬のメッセージが浮かんだ。

【MISSION COMPLETE！】

【報酬：感謝ポイント＋30　記憶スキルLvアップ】

【新項目：エピソード追加】

最後に、ユウはひとりで校舎の裏手に回った。

そこには、かつて一人で泣いた場所、そして初めて仲間たちと本音を語り合った思い出の場所があった。

「ここから始まったんだな……」

胸の奥で、静かに呟く。

【SPECIAL SCENE：回想の場所】

【記憶アルバム最終ページ更新】

「これからも、いろんなサイドクエストが待ってるんだろうな」

ユウは笑みを浮かべ、HUD-LINKを閉じた。

風が吹き抜け、空にはどこまでも続く青が広がっていた。

「さあ、次の冒険に行こう」

ユウは振り返り、ゆっくりと歩き出した。