24. きみの未来にファストトラベル

卒業式を翌日に控えた放課後、ユウたちは校舎の前で集まっていた。

夕陽が沈みかけ、校舎の壁を淡い金色に染め上げている。風は少し冷たいが、心の中は不思議な高揚感に包まれていた。


「これで、最後の放課後かもしれないな」

レンが笑いながら呟き、リナが「寂しいけど、ワクワクするね」と頷いた。

ハルカはタブレットを操作し、ユウトは静かに空を見上げていた。

ユウの手元には、HUD-LINKからの新しいクエストが通知されていた。


【QuestMaster:未来にファストトラベル】

【内容:進路先のオープンキャンパスや説明会にAR体験で参加し、未来の自分をイメージせよ】

【報酬:未来ビジョンポイント+100 進路自信度UP】


「これ、未来の自分に“先回り”する体験らしいよ」

リナが笑顔で説明し、みんなのHUD-LINKが一斉に起動した。

画面には、それぞれが選んだ進路先のシンボルが現れ、ARの未来地図が展開される。

「これ、まるでRPGの“次の街”を先に見に行くみたいだね」

ユウトがつぶやくと、ユウは思わず笑った。


ユウのHUDには、クリエイティブ系の街並みがホログラムで浮かび上がる。そこにはデザインスタジオやゲーム開発会社、ストーリー制作の現場が広がり、未来の自分がその中を歩いていた。

「……本当に、僕にもこんな未来が?」

胸の奥に小さな不安と、それを上回る期待感が広がる。


レンはスポーツ推薦で進学予定のスタジアムを見つめ、拳を握りしめた。

「ここが、俺のフィールドか……負けられないな」

ハルカは研究施設のAR映像を見つめ、瞳を輝かせていた。

「ここで、もっと深く学びたい」

リナは国際系のキャンパスを眺め、興奮したように声を上げた。

「海外の空気、こんな感じなんだ……早く行きたいな!」


ユウは、自分の未来地図を見つめながら、心の中でつぶやいた。

(怖い気持ちもあるけど……でも、ここまで一緒に進んできた仲間たちとなら、きっと大丈夫)


HUD-LINKが、全員の画面をリンクさせ、未来マップ上に「パーティメンバー」のアイコンを重ねた。

「進む道は違っても、みんな繋がってる」

ユウの声に、仲間たちの顔に笑顔が広がった。


【MISSION COMPLETE!】

【報酬:未来ビジョンポイント+100 進路自信度UP】

【ボーナス:絆リンク・アップグレード】


空が群青に染まり、校舎の窓に明かりが灯り始めた。

ユウトが「明日が卒業式か……」とぽつりと呟き、レンが「泣くなよ」と冗談を飛ばす。

リナが「泣くのはレンでしょ」と笑い、ハルカが「全員で、最後まで笑顔でいよう」と小さな声で言った。


ユウはHUD-LINKをそっと閉じ、未来マップの光景を心に刻んだ。

「どんな未来でも、きっとまた“みんなで集まる場所”がある。僕たちなら、それを作れる」


その言葉が胸の奥に残り、

明日という新たな扉が、静かに彼らの前に現れた。


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