21. サヨナラのシナリオ分岐点

冬の空はどこまでも澄んでいて、校舎の屋上から見下ろす街並みは冷たい風に吹かれて揺れていた。

その日、ユウたちは進路希望調査票を手に、教室の後ろの掲示板前に立ち尽くしていた。


「……進路、決めなきゃいけないんだよね」

リナが小さな声で呟いた。

その言葉に、誰もが一瞬視線を落とす。

HUD-LINKには、まるでRPGの選択肢画面のように「進路ルート選択」が浮かび上がり、複数の分岐が提示されていた。

【進学】【就職】【留学】【未定】

選択肢の下には、未入力の進路希望欄が blinking(点滅)していた。


「私、理工学部を目指す」

ハルカがタブレットを閉じ、静かに告げた。彼女のHUD-LINKには「進路:理工学部研究コース」と明記され、ステータス画面が一瞬輝きを放った。


「俺は……やっぱりサッカー推薦で進学かな」

レンは笑顔を見せたものの、その瞳には迷いが宿っていた。

「でも、これが俺の選んだ道だから」


「私は……まだ決めてない」

リナがノートを抱えたまま言葉を詰まらせる。

「夢はあるけど、現実のこと考えると怖くて……」

その声は少し震えていて、ユウの胸に静かな痛みを残した。


「俺……」

ユウトがふとつぶやき、進路票を見つめた。

「美大志望って書いた。でも父さんに“そんな夢みたいなこと”って言われた」

HUD-LINKの画面に「ルート確定エラー」の文字が浮かび、未決定状態が続いていた。


「でも……」

ユウトは進路票を握りしめ、絞り出すように言った。

「夢を諦めたら、自分が自分じゃなくなる気がするんだ」

その声に、空気が震えた。ユウは無言で頷き、リナの手をそっと握った。


「私も、ちゃんと自分で決める」

リナの声は、先ほどより少し強かった。


「僕は……」

ユウは自分の進路票を見つめた。画面には「進路未入力」の文字が浮かんでいた。

これまで、仲間たちと過ごした日々、挑戦、挫折、達成感。

「僕は、“みんなで作る物語”を創りたい」

その言葉が、胸の奥から溢れ出た。


HUD-LINKが光り、画面に「進路:クリエイティブ系/ストーリーデザイン」と表示され、

「進路ルート決定」の文字が確定した。


誰かが勇気を出すと、それが小さな灯火となり、周りを照らす。

レンは肩をすくめ、「お前ら、カッコよすぎ」と苦笑し、ユウトは「俺も、もっと本気出す」と呟いた。

ハルカは「自分の夢は、自分で守る」と淡く微笑み、リナは「未来って、怖いけど……ワクワクするよね」とつぶやいた。


【SPECIAL SCENE:サヨナラのシナリオ分岐点】

【結果:全員の進路ルート表示】

【友情EXP+50 勇気スキルLvアップ】


教室の窓から差し込む夕陽が、全員の影を長く伸ばし、未来へと続く道を照らしていた。

「……これからも、それぞれの道を進もう。でも、いつかまた、同じ物語の続きを描けたらいいな」

ユウの声に、仲間たちは静かに、でも力強く頷いた。


選ばれた選択肢は、リセットできない。

でも、その一歩は、必ず誰かの勇気になる。

教室に灯った夕陽の中、ユウたちはそれぞれの未来に向かって歩き出した。


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