19. 模試ボス戦、君のスキルが光る時

文化祭の興奮が冷めやらぬ翌週。

校内には、緊張と静けさが交錯する空気が漂っていた。

全国模試の日。

体育館が試験会場となり、普段のざわめきは消え、鉛筆の音と紙をめくる音だけが響く。

ユウは試験用紙を前に深呼吸し、HUD-LINKの画面を開いた。


【QuestMaster:全国模試ボス戦】

【内容:制限時間内に与えられた問題を突破し、最高点を目指せ】

【報酬:知識ポイント+50 自己効力感EXP+30】

【隠し報酬:クラス総合力UPボーナス】


(これまでの“クエスト”と違って、今度はリアルな勝負だ)

心臓が早鐘を打ち、手のひらがじっとりと汗ばんでいた。

だが、ユウはこれまでの“冒険”で培った仲間との絆を思い出した。

「一人じゃない」

心の中でそうつぶやき、シャープペンを握り直した。


試験開始の合図と同時に、会場に静寂が広がる。

問題用紙に目を走らせ、HUD-LINKが自動で「問題進行マップ」を立ち上げる。

「ここは基礎問題ゾーン……まずはウォーミングアップだ」

心の中でつぶやき、着実に解答を進める。

解ける問題が増えるたびに、画面の「進行ゲージ」が上昇し、スキルメーターが光を帯びていった。


途中、難解な応用問題ゾーンに突入した瞬間、周りのペンの動きが止まり始める。

「ここで立ち止まるな……!」

ユウはHUD-LINKを活用し、これまでの解答パターンをARで再確認し、思考を整理した。

「この問題は、あの時の課題と似てる……」

文化祭の準備中に解いた謎解きクエストの記憶がよみがえり、解法の糸口を見つける。

一つ、また一つと正答を積み重ねるたび、進行ゲージが光を増し、画面に「ボスHP」が表示された。


(残り時間はあと少し……最後の一撃を決めろ!)

ラストの総合問題に挑む。手が震えそうになるのを押さえ、ペンを走らせる。

解答を書き終えた瞬間、HUD-LINKが高音を響かせ、画面に「FINAL HIT!」の演出が現れた。


【MISSION COMPLETE!】

【報酬:知識ポイント+50 自己効力感EXP+30】

【隠し報酬:クラス総合力UPボーナス達成】


ユウは鉛筆を置き、深い息を吐いた。会場の静寂の中、心臓の鼓動が耳に響いた。

周りでは、レンがガッツポーズを見せ、リナが小さく「やったね」と微笑む。

ハルカはそっとタブレットを閉じ、ユウトは無言でユウに親指を立てた。


試験終了後、校庭に集まった仲間たちの顔には、やり切った充実感がにじんでいた。

「本番の試験でも、今日みたいに頑張ろう」

ユウの言葉に、全員がうなずいた。HUD-LINKには、クラス全体の「知識EXP」が上昇し、画面に「団結ボーナス!」の文字が踊っていた。


「やっぱり、俺たちの強さは“個人”じゃなく、“チーム”なんだな」

レンの言葉に、皆が笑顔を見せた。

ユウはHUD-LINKを閉じ、空を見上げた。

冬の青空に、どこか次の冒険を予感させる透明な光が揺れていた。

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