18. レイドバトル文化祭:共闘の朝
文化祭当日。
空は澄み渡る青で、朝の光が校舎の窓を黄金色に染めていた。
ユウたちは、昇る陽に背中を押されるように、教室へと足を運んでいった。
窓の外には、早朝から校庭に並ぶテントや、クラスごとの出店準備に動き回る生徒たちの姿。
その光景は、まるで冒険のフィールドを舞台にしたレイドバトルの開幕を告げる合図のようだった。
「いよいよだね」
リナが明るく声を上げ、ハルカは「準備は完璧」と静かにタブレットを操作する。
レンは「今日は俺たちが“ボス戦”をクリアする番だな」と拳を握り、ユウトも「任せろ」と笑みを浮かべた。
ユウはそんな仲間たちを見渡し、胸の奥に小さな誇らしさを覚えていた。
HUD-LINKが光を放ち、今日の特別ミッションを告げる。
【QuestMaster:レイドバトル文化祭】
【内容:クラス全体で協力し、模擬店と脱出ゲーム体験型イベントを成功させよ】
【報酬:絆ポイント+100 友情EXP+50】
クラスの仲間たちが一斉に集まり、全員で気合を入れた。
「絶対に最高の一日にしよう!」
ユウが声を上げると、歓声が教室に響き渡る。
準備は綿密だった。
ハルカが管理するスケジュールアプリが全員のスマホとHUD-LINKに同期され、役割分担や進行状況がリアルタイムで共有されていた。
リナは屋台での接客練習をリードし、レンは体育館に設置した脱出ゲームの最終チェックを行った。
ユウトは看板や装飾を整え、来場者を惹きつける仕掛けを組み込んでいた。
開場時間と同時に、生徒や保護者、地域の人々が次々と来場し、校舎がにぎわい始める。
「いらっしゃいませ!」
「こちらは脱出ゲーム体験です!」
リナやレンの元気な声が飛び交い、ユウは調整役として現場を駆け回った。
しかし、予期せぬトラブルも発生する。
屋台の機材が一時停止し、脱出ゲームのパズル装置が誤作動を起こした。
「まずい……」ユウトが焦りを見せるが、ハルカが即座に「システムを再起動する」と指示し、リナが「お客さんには少しお待ちいただく」と笑顔で対応した。
レンは混乱するスタッフをまとめ、「落ち着け、みんな!一つずつ片付けよう!」と声を張り上げた。
ユウはHUD-LINKを起動し、現場の問題点を可視化するARマップを立ち上げた。
「ここで待ち時間の案内を増やして、こっちは装置のリセット……」
指示を飛ばし、仲間たちと連携しながら次々と問題を解決していった。
時間が経つにつれ、トラブルは沈静化し、イベントは再び順調に進み始めた。
脱出ゲームをクリアした来場者が笑顔で写真を撮り、屋台のスイーツを手にした子どもたちが「おいしい!」と歓声を上げる。
その光景に、ユウたちの胸には言葉にならない達成感が広がった。
【MISSION COMPLETE!】
HUD-LINKが画面いっぱいに「クエスト達成!」の文字を映し出し、絆ポイントと友情EXPが上昇する演出が現れた。
「やったな!」
レンがガッツポーズを取り、リナが「これで文化祭は大成功だね!」と笑った。
ハルカはタブレットを閉じ、ユウトは看板の文字を指差して「これ、きっと忘れられない一日になる」とつぶやいた。
ユウはふと、空を見上げた。
冬の気配を孕んだ空に、柔らかな夕暮れが差し始め、校舎が金色に輝いていた。
「みんなと一緒だから、ここまで来られたんだ」
心の中でつぶやき、そっとHUD-LINKの画面に手を添えた。
そこには、仲間たちの笑顔が「思い出アルバム」の新しい1ページとして保存されていた。
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