17. パーティ分裂、そして再招集
AIの暴走が終息してから数日後、学校には静けさが戻っていた。
けれど、ユウたちの間には、どこかぎこちない空気が流れていた。
あの夜、暴走システムに立ち向かったものの、それぞれが心に抱えた感情は簡単に消えなかった。
「なんかさ、最近、みんな集まらないね」
リナの声が放課後の教室にぽつりと響いた。
ユウトは窓際でノートに向かい、レンは無言でスマホを眺めていた。ハルカはタブレットを閉じ、ユウはノートに鉛筆を走らせる手を止めた。
誰もがどこか、心ここにあらずだった。
「……仕方ないさ」
レンが低い声で呟いた。
「それぞれ、自分の進路とか、考えることあるんだろ」
言い訳のように聞こえるその言葉に、ユウは胸がざわついた。
(進路とか、それだけじゃない……あの夜、自分は何もできなかった。ハルカやみんなに頼るばかりで)
自分の無力さを痛感した記憶が、胸を締めつけた。
「……ごめん、今日は帰る」
ユウトが立ち上がり、無言で教室を後にした。
それを見送ることしかできない自分たち。リナも立ち上がり、そっと教室を出た。
残されたユウ、レン、ハルカは無言のまま教室に座り続けた。
窓の外では夕陽が沈みかけ、長い影を伸ばしていた。
その夜。
ユウは布団の中で、HUD-LINKの画面をぼんやりと眺めていた。
画面には【パーティ活動:休止中】と表示され、仲間たちのステータスが灰色に沈んでいた。
「こんな形で終わりたくない……」
胸の奥から湧き上がる声に、ユウは指先をHUDに伸ばした。
【NEW MISSION:再招集クエスト発令】
【内容:パーティメンバーを再集結せよ】
【報酬:絆ポイント+50 友情EXP+20】
「……やるしかない」
翌日、ユウはリナと廊下ですれ違った。
「リナ、お願いがある。みんなを集める手伝いをしてほしい」
リナは一瞬驚いたが、すぐに笑顔で頷いた。
「もちろん!私に任せて!」
放課後、ユウとリナはメッセージを送り合い、声をかけて回った。
レンには「もう一度、みんなで話そう」と、ハルカには「君の力が必要なんだ」と。
ユウトには「君の意見が、僕たちには大切なんだ」と。
そして迎えた放課後の教室。
集まった全員の顔には、どこか不安と期待が入り混じっていた。
「……ごめん」
ユウトが、先に口を開いた。
「俺、自分のことでいっぱいいっぱいで、みんなのこと、ちゃんと考えられなかった」
「俺だって、逃げてた」レンが続いた。
「みんなに頼りっぱなしで……ごめん」ハルカが小さく言った。
ユウは、少し震える声で答えた。
「でも、それでも俺たちは、一緒にいたい。これからも、一緒にクエストを進めたいんだ」
彼の言葉に、HUD-LINKが柔らかい光を放ち、画面に「再招集成功!」の文字が浮かび上がった。
【MISSION COMPLETE!】
【報酬:絆ポイント+50 友情EXP+20】
【新スキル:再結集の絆 解放】
「もう一度、パーティとして進もう」
リナの言葉に、皆が笑顔を取り戻した。
窓の外には、夜空に星が瞬き始めていた。
彼らの絆もまた、ひとつの星となって、暗い夜を照らしていた。
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