16. AIエラーと現実のバグフィックス
冬の訪れが街を包み込み、校舎の窓にうっすらと霜が降りた。
放課後の教室は、文化祭を終えた解放感と、新たな進路選択の重圧とで、不思議な緊張感に包まれていた。
その日、ユウたちは部活後の作業を終え、それぞれの席でHUD-LINKを眺めていた。
突然、画面に赤いフラッシュとともに警告が走る。
【警告:AIシステム障害発生】
【一部タスクが暴走中】
【緊急メンテナンスモード開始】
「えっ、これ……?」
ユウが声を上げると、ハルカがすぐにタブレットを取り出し、画面に表示されるシステムログを解析し始めた。
「……AIの指令が暴走してる。放課後クエストや授業進行タスクが無限ループ状態になってる」
ハルカの冷静な声に、教室の空気がぴんと張り詰める。
「でもこれ、学校のAIシステムだろ?勝手にいじったら大問題じゃ……」
リナが不安げに言い、レンも「そもそも、どうやって止めるんだ?」と眉をひそめた。
「……誰かが止めないと、このままじゃみんなの端末に負担がかかりすぎる」
ハルカがHUD-LINKの管理画面を開き、手早くコマンドを入力した。
「私は内部コードにアクセスする。ユウたちは現実側で、先生たちに伝えて混乱を抑えて」
「でも……」ユウは一瞬迷った。
(ハルカ一人に任せるなんて……でも、今は自分たちにできることを)
「わかった、任せる。ハルカ、無理はしないで」
「……うん」
ハルカの指先が、タブレット上を疾走する。コマンドラインが高速で流れ、アクセスランプが点滅する。
【システムアクセス中:制御権限取得】
【バグフィックスコード展開:進行中】
一方、ユウたちは廊下に出て、職員室へ駆け込んだ。
レンが「先生!AIシステムが不安定です!」と声を上げ、ユウトとリナが具体的な状況を説明した。
教師たちは驚きつつも迅速に対応を始め、全校放送で「一時的にHUD-LINKをオフに」と指示が流れる。
「ハルカ、大丈夫かな……」
ユウは心配を胸に、教室に戻ると、ハルカが真剣な表情で最後のコマンドを打ち込んでいた。
「これで……!」
【バグ修復成功】【システム再起動】【正常化確認】
ハルカのタブレット画面に、勝利のメッセージが表示された。
「……終わった」ハルカがほっと息を吐く。
ユウはその場に駆け寄り、「すごいよ、ハルカ!」と笑顔を見せた。
リナも「さすがだね!」と声を弾ませ、レンは「今度から“バグハンター”って呼ばせてもらうわ」と冗談を言った。
ユウトも「ハルカの冷静さがなかったら、もっと大変なことになってた」と小さく呟いた。
【MISSION COMPLETE!】
【報酬:責任感スキル+20 チームワークEXP+30】
【新スキル:緊急対応力 解放】
窓の外では、夜空に小さな星が瞬いていた。
「AIだって、完璧じゃない。だからこそ、僕たちが支えてあげるんだ」
ユウの言葉に、ハルカはそっと微笑んだ。
仲間たちの間に、静かな達成感と、未来への信頼感が広がっていった。
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