11. コンビニ前のリアルボス戦

その夜、ユウたちは文化祭の準備で遅くまで学校に残り、作業を終えてからみんなで駅前のコンビニに立ち寄った。

薄暗い街灯の下、コンビニの明かりがぽつんと浮かび上がり、夜の街を照らしていた。


「お疲れ様!今日は本当に頑張ったね!」

リナが笑顔でコンビニの袋を掲げる。温かい肉まんの匂いがふわりと漂った。

ハルカはホットドリンクを手に、ユウトはペットボトルを持ち、レンは大量のお菓子を抱えていた。


「まるで打ち上げみたいだな」

レンが冗談めかして言い、みんなが笑い合った。

その時、HUD-LINKが突然赤い警告を発した。


【QuestMaster:リアルボス接近警報】

【内容:コンビニ前にて強敵出現。協力して切り抜けよ】

【報酬:勇気ポイント+20 チームワークEXP+10】


「……え?」

ユウが戸惑う声を上げると、店の脇に不自然にたむろする三人組の上級生が目に入った。

一人が煙草を手にしていて、もう一人はスマホをいじりながら睨みつけてくる。

視線がユウたちに向き、嫌な緊張感が走った。


「よぉ、そこのお前ら、ちょっと待てよ」

その声は低く、威圧的だった。レンが一歩前に出る。


「すみません、通りますね」

落ち着いた声で返すが、相手は道を塞ぎ、ニヤリと笑った。

「なんだよその態度。先輩に挨拶ぐらいしろよ」

言葉は軽いが、周囲の空気は重く張り詰めていた。


「……やばいな、これ」

ユウの胸が早鐘を打つ。HUD-LINKの画面には、現実離れした“ボス戦モード”が浮かび、上級生たちの名前が「不良A」「不良B」「不良C」と表示された。


「ここで逃げたら負けだ」

レンが小さく呟き、仲間たちを振り返る。

「俺たちは一緒にいる。絶対に、誰も置いていかない」


「……わかった」ユウは震える手を握りしめ、頷いた。


ハルカがそっと手首のHUD-LINKを操作し、画面に「心理防御スキル:冷静」を起動。

ユウトは無言で一歩前に出て、相手の目を見据える。

リナは「今ならまだ引ける」と小さくつぶやき、けれどその場を離れなかった。


「……すみません、通りますね!」

レンが再び声を張り上げ、仲間たちと共に一歩前に進む。


一瞬の沈黙。

相手は嘲笑を浮かべるが、その視線に全員がしっかりと立ち向かった瞬間、

HUD-LINKが高音で告げた。


【SPECIAL SKILL発動:「勇気の一歩」】

【効果:敵対行動の無効化 全員のステータス一時アップ】


空気が変わった。

上級生たちが肩をすくめ、舌打ちして道を開けた。

「チッ、めんどくせぇな。ほら、行けよ」


ユウたちは、息を呑みつつ、しかし誰も後ろを振り返らずにその場を通り抜けた。

通り過ぎた後、レンが「大丈夫か?」と仲間に声をかけ、リナが「めっちゃ怖かったけど…勝ったね」と安堵の笑みを見せた。


「これが、リアルのボス戦なんだな……」

ユウは胸に残る動悸を感じながら、夜空を見上げた。

HUD-LINKには「MISSION COMPLETE!」の文字と、仲間全員の「勇気ポイント」が上昇する演出が表示されていた。


夜風が少し冷たく、でも心の中には確かな温かさが残っていた。

「また一つ、強くなれたね」

ハルカの言葉に、みんなが笑い、次の冒険を思い描いた。


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