7. 放課後ポスターズ・セッション

教室の窓から差し込む夕陽が、オレンジ色の光を床にゆったりと広げていた。

普段は賑やかな昼間の空気とは違い、放課後の教室はまるで時間がゆっくりと流れているかのように静かだ。

その空間に、画材のにおいと色彩の香りがかすかに漂う。


ユウトは、無言で鉛筆を動かし続けていた。

彼の手元には、白いポスター用紙。そこに描かれる線は繊細で、彼の内面の繊細さを映し出しているようだった。

HUD-LINKの画面には、今日のクエストが表示されている。

【QuestMaster:文化祭ポスター制作チームに参加せよ】

【ミッション:各自の個性を活かしつつ、最高のポスターを協力して完成させよ】


彼の隣では、ハルカがタブレットで資料を調べ、周囲に数値や色彩理論の情報を投影している。

レンは、力強く筆を持ち、活発に色を乗せていく。

そしてユウもまた、戸惑いながらもその輪の中にいる自分を感じていた。


「ユウト、ここの部分の色、もう少し暖かみがあったほうが目を引くかな?」

ハルカの声は静かで丁寧だ。

ユウトは目を伏せながらも、答える。


「うん、でもこの青のクールさも残したいんだ。ポスターに静けさを与えるから」

彼の声は少し震えていた。

それは自分の意見を通すことへの緊張感と、みんなの気持ちを壊したくないという優しさが混じっていた。


ユウトはふと、手を止めて周囲を見渡す。

レンの顔は真剣そのもので、赤い筆を握る手に力が入っている。

ハルカは冷静に画面を見つめながら、微かな眉間の皺を寄せていた。


「僕は、みんなの考えが混ざり合う瞬間が好きなんだ」

彼は声に強さを込めて言う。

「このポスターは、僕たちの個性が一つに溶け合う場所なんだと思う」


しかし、言葉が交錯すると同時に、小さなすれ違いも生まれる。

レンは「もっと赤を大胆に使おう!」と主張し、ハルカは「青の冷静さを失わない方がいい」と反論。

ユウトはどちらの意見も大事にしたいと願うあまり、どっちつかずの態度になってしまう。


部屋の空気が一瞬、重くなる。

それでも、ユウは意を決して声をかけた。


「みんな、少しだけ立ち止まってみよう。お互いの意見を、ちゃんと聞いてみない?」

彼の言葉に、レンもハルカも目を合わせてうなずく。


深呼吸をして、みんなが自分の気持ちを言葉にする。

レンは、赤の情熱とエネルギーが文化祭を盛り上げる象徴だと言い、

ハルカは青の落ち着きが見ている人の心を癒すと説く。

ユウトはその両方を尊重し、調和のとれた色彩を追い求めたいと伝える。


そんな会話の合間、ユウトのHUD-LINKが突然、光を放つ。

AIが全員の意見を解析し、最適な配色プランを提案したのだ。

画面にはそれぞれの個性を融合させた調和のとれた色彩が美しく映し出される。


「これなら、みんなの想いがちゃんと届くね」

レンの笑顔が広がる。

ハルカも頷きながら、目に輝きを取り戻す。


そして――


【MISSION COMPLETE!】

【友情ポイント+15】【クリエイティビティスキルアップ】


ポスターは教室の壁に堂々と貼られ、色彩は夕陽の中で温かく輝いていた。

完成を祝う仲間たちの顔は、ほっとした表情と誇らしさで満たされている。

彼らの青春は、色鮮やかな一枚の絵となって刻まれていった。


夕暮れの教室の空気は、静かに、しかし確かに、

“これから一緒に歩む道”を祝福しているようだった。

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