5. ミッション:部活ダンジョン初踏破

放課後、校舎の廊下は部活勧誘の声で溢れていた。

「サッカー部、見学どうぞー!」「文芸部は静かで落ち着けます!」

色とりどりのチラシ、部員たちの呼び込み、教室の窓から差し込む斜陽。

そのすべてが、まるで冒険の始まりを告げる合図のようだった。


ユウのHUD-LINKにクエストが発令される。


【QuestMaster:本日のMAIN QUEST】

【内容:どれか一つの部活に“ダンジョン”として挑戦せよ。未知の世界をクリアしてみよう】

【報酬:新スキル「挑戦心」】


「部活って、なんか緊張するよな」

レンが笑いながら、ユウの背中を押す。

「迷ったら一緒に見学しようぜ!」

隣でハルカが「私は科学部、見てみたい」とつぶやき、ユウトは無言で美術室のほうを見ている。


「よし、せっかくだしみんなで順番に回ってみない?」

ユウの提案に、みんながうなずく。


最初はサッカー部のグラウンド。

“部活ダンジョン:グラウンド・オブ・ライジングボール”と、

HUD-LINKのARがフィールドをファンタジーの草原のように変える。

ボールが敵モンスターに、ゴールは“財宝の間”に――。


「じゃあ、シュート対決で勝負だ!」

レンが先陣を切り、ユウとハルカも真剣な顔でボールを追う。


緊張で足が震える。

けれど、レンが「失敗してもOK!次があるから」と励ましの言葉をくれる。


パスがうまくいかず転びそうになるユウ。

そのときハルカが「こっちにパスして」と小さく声を出し、

二人の連携でモンスター型ディフェンダーを突破。


「ナイス!」

レンが思い切り手を叩く。

HUD-LINKには“チームワーク・コンボ”のエフェクト。


次は美術部。

ユウトの案内でアトリエに入ると、ARが教室を“迷宮ギャラリー”に変換した。

「この色を混ぜて“虹色の鍵”を作ろう」

お題に苦戦するが、みんなの意見で新しい色が生まれ、宝箱のロックが解除される。


理科部では化学実験の“エリクサー調合クエスト”。

ハルカの真剣なまなざし、レンの失敗をフォローするユウ。

わからないことだらけでも、「一緒なら大丈夫」という空気があった。


それぞれの部室、先生、先輩たち。

少し怖そうな人もいるけど、思いきって「よろしくお願いします!」と声を出せた。


やがて夕焼けの校舎に戻ったとき、

HUD-LINKの画面が光りだす。


【MISSION COMPLETE!】

【新スキル「挑戦心」獲得】【パーティボーナス:初期値UP】

【Special Report:今日の思い出フォトがギャラリーに追加されました】


「みんな、けっこうやるじゃん」

レンが笑う。その顔は、どこか誇らしげだ。


「私、ちょっと部活が楽しみになった」

ハルカが静かに微笑む。


「……僕も。最初は怖かったけど、誰かと一緒だと心強いね」

ユウの言葉に、みんながうなずく。


窓の外では、空が茜に染まり始めていた。

今日一日で、それぞれの「まだ知らなかった自分」が、ほんの少し顔を出した気がする。


次のクエストは――

「はじめての“失敗”もレベルアップ」

仲間と過ごすこの世界が、ますます冒険の舞台になっていく。


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