その眼はもう、涙を知らない

戦うしか、生きる術を知らなかった。
兵士として育てられ、任務だけをこなしてきた少年兵「D-02」は、左眼を潰されたことで「戦力外」とされ、組織から切り捨てられる。
感情を押し殺し、痛みにも声を上げず、ただ命令に従い続けてきた彼に残されたのは、「居場所の喪失」だけだった。

だが――そのとき、電話が鳴った。
彼を「死神」と呼んだ声が、新たな地獄の扉を開く。

そこは、兵士ではなく「人間」としての名前を問われる場所。
殺すか、救うか。
何者として生きるかさえ、自ら選べと突きつけられる部隊だった。

「正しさ」など存在しない。
この物語は、命の価値を知ることもなく戦場に放り込まれたひとりの青年が、
死ではなく「自分の名」を求めて歩き出す、再生と狂気のレクイエム。

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