地獄の中心は楽園でもある!

番号しか持たない兵士D-02が、「殺す」世界から「死なせない」世界へと踏み込む再生譚。無機質だった呼吸・脈・痛覚が、ハンニバル少佐と“白い戦場”に触れるたび、有機的な体温へと移行していく描写がすごいです!

押しつけがましい説明はなく、代わりに「喉の渇き」「眼帯の下の疼き」「金属と血の匂い」が文のリズムになり、沈黙さえ台詞のように響く。ECMOや穿刺の手順を“戦闘”として見せる筆致は、医療×ミリタリーとして作者様ならでは!と感じました。艶やかな低音で地獄を案内するトリガーも魅力的で、三者の関係性が作品の色気を担保している。

身体の反応だけで「生まれなおし」を描き切る作者様の描写力に脱帽です!!
ヒリつく手触りの人間再生譚、ミリタリーの硬度と医療の熱を同時に味わいたい人におすすめです。地獄の中心は楽園でもある――その逆説を、確かな文体で証明してみせる一作。

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