「……あれが、俺の部隊の――“地獄の中心”だよ」

識別番号は「D-02」。
名もなく、居場所もなく、ただ命令に従うだけの兵器として育てられた青年。

兵士としてすら廃棄された彼に差し伸べられたのは、白い戦場で働く医療部隊だった。
そして中心には、あの女――ハンニバルがいる。

「ハンニバルは、戦場で死ぬ寸前の塊を生かす。戦場と同じように、命の境界線を力ずくで引き戻す」

彼には、ハンニバルが自分の何かを変えるのだと予感していた。
先程まで鬼神のような姿を見せていたのにもかかわらず、実際に出会った彼女はあまりに自然体だったからだ。

「……ねぇ、名前ないの? なら、エデン、でどう?」

その瞬間、胸の奥で何かが跳ねた。
エデンという音の響きが、ひどく心地よかったのだ。

「――お前に、護衛兼秘書をやってもらいたい」

その一言は、妙に深く、胸に刺さった。
エデンは、たしかに、ここで生まれなおしたのだ――。

これは、命の限界を超える者たちが紡ぐ、戦場医療の最前線ドラマである。

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