第19話切ない
「あっ。良美が出て来た!」
「愛佳。」
「何があったの?」
「うん。ちょっとね。」
「ここ、常世の国は、九州と対になっている。イエス・キリスト様は薩摩の国でお納め縄をした大きな岩をお守りしている。そして護衛をしている俺は、イエス・キリスト様が住んでいる所の近くに屋敷を構えている。そなたら、来るか?」
「行くー!ねっ良美!」
「うっうん。愛佳。弘幸は?」
「、、、行くよ!」
島津義弘は愛佳達を自身の屋敷へと案内した。屋敷に着いた愛佳は良美と弘幸をよそに、大いにはしゃいでいる。戦国時代そのものの火縄銃、弓、槍、鎧。
「愛佳って本当に戦国時代好きね。それなのに古代エジプト文明の展覧会なんかに誘ってごめんね。」
「謝ることないよ。寿命よ!寿命!」
「愛佳、、、。」
「弘幸ったら、さっきから何黙りこくってんのよ!さては本物の島津義弘さんに会えて感激だとか!男だもんね!」
「、、、まっまあな!愛佳!」
「義弘さん、鎧着て火縄銃持ってくれない?愛佳、見たい!」
「愛佳殿、邪悪な気配は感じるが、敵もいないのにそのような真似は出来ぬ。」
「ケチッ。」
「ケチとは何だ!ケチとは!」
「愛佳が着せて上げる!」
「バッ。よせっ!」
義弘と愛佳はバランスを崩し、床に2人もろとも倒れ、義弘の顔と愛佳の顔が至近距離になってしまった。2人は顔を赤らめ、そして直立した。それを見ていた良美は恋の予感?と思って微笑ましい気持ちになった。
「ゴホッ。」
義弘は手を口に寄せた。
「良美殿、下界の様子が気になるのでは?」
良美は鈴木警部補を思う。切ない気持ちで一杯になった。
「そこの海に面している櫓から下界の様子が見える。」
「櫓から?」
「気になるなら、登られよ。そして、見たい物を念じるのだ。それから、海には落ちてはならない。黄泉の国に繋がっている。」
良美はそれを聞いて居ても立ってもいられなくなり、櫓を登った。
(鈴木警部補!)
良美は手を握り、瞳を閉じた。
鈴木警部補とお義母さんが会話しているのが見えた。
「今日も返済行くの?拓哉。」
「ああ。」
「良美ちゃんの自殺の賠償金、お母さんも手助けしようか?」
「別にいい!それに良美は好き好んで身投げしたわけじゃない!」
「お母さん、拓哉のそんな状態見てるの辛いの。」
「ごめん。母さん。」
パタンッ。
鈴木警部補は玄関から出て、銀行へと向かう。そしてその足で東京湾へと向かった。
「良美、、、愛してる、、、。」
フッ。
そこで下界の景色は途切れた。
「賠償金、、、。すっ鈴木警部補。私なんかのためにあんな苦労を。ごめんなさいっ。ごめんなさいっ。」
良美は胸が引き裂かれそうになった。今すぐにでも実家に電話したい。少しでも鈴木警部補が楽になれるように、賠償金のことを。でも叶わない。私は死んでいる。
「鈴木警部補、、、愛してる、、、。」
「鈴木警部補って誰?」
「弘幸、、、。」
「涙を吹いてやる。」
弘幸は、布切れをポケットから取り出し、良美の顔へと近づける。そして、目ではなく口元にやり、そして、口元を抑える。その布切れには、意識を遠のかせる薬草の汁が染みこませてある。
「ひっ弘幸、、、ど、、、うして?」
ドボーンッ!
弘幸は良美をさらい海へと跳び込んだ。
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