第13話多恵お婆ちゃん
鈴木警部補は、本当に良美は甲府市民病院へと行ったのか疑問に思いつつ、車を早川町から甲府市へと走らせた。
甲府市民病院ー。
鈴木警部補は病院の受付へと直進し、医療事務員に尋ねた。
「早川良美さんと面会したいんですが。」
「お名前お願いします。」
「恋人の鈴木拓哉です。」
「承知しました。」
5分位待った所、医療事務員が首を傾げる。
「変ですね。早川良美さんという患者さんはいませんけど。何かの間違いでは。」
(だっ騙された。)
鈴木警部補はしくじった顔を隠せなかった。
「どうされました?もう一度調べましょうか?」
「いや。いいです。」
(すぐに早川町へ戻らなくては。良美が危ない。)
「
一人のお婆さんが鈴木警部補にそう声かけた。
「人違いですよ。お婆ちゃん。」
「いいや。あんたは私の孫、祥平じゃ。死ぬ前に神様が会わせてくれたんだね!」
「
「看護婦さん、残り少ない寿命を祥平と過ごさせておくれ。」
「困ったわね。あの、、、。」
「鈴木です。」
「鈴木さん、ちょっといいかしら。」
「はい。」
多恵お婆ちゃんを迎えにきた看護婦と鈴木警部補は多恵お婆ちゃんが聞こえない程度にちょっと距離を置く。
「鈴木さん、あの方は多恵お婆ちゃんと言ってね、旦那さん、息子夫婦、孫の祥平君を一気に交通事故で亡くしたのよ。多恵お婆ちゃんはいつ死んでもおかしくない。看取ってくれる人が誰一人いないって、鈴木さんには関係ないわね。」
バターンッ。
「多恵お婆ちゃん!」
鈴木警部補に話しかけてた看護婦は医師に緊急コールした。
辺りがざわつく。
♢
「なんとか一命を取り戻したようだ。」
「先生、ありがとうございます。祥平は?」
「幻を見たんだよ。多恵お婆ちゃん。」
多恵お婆ちゃんはガックリきていた。
それを見ていた鈴木警部補は先程の看護婦さんに僕が看取りますと言った。
その看護婦はいいんですかと一言。
「多恵お婆ちゃん!僕だよ!祥平だよ!」
と鈴木警部補は多恵お婆ちゃんに寄り添う。
「祥平!やっぱり幻じゃなかったんだね!」
「多恵お婆ちゃん!長生きしてね!成人式、絶対見に来てよ!」
「もちろんじゃ!楽しみにして、、、いる。ゴホッ。」
「大丈夫ですか!?」
「どうしたんだい?よそよそしい。婆ちゃんは大丈夫じゃ。」
「良かった。」
(良美、、、。)
それから三日後、多恵お婆ちゃんは祥平になりすました鈴木警部補によって看取られ、息を引き取った。
(すまない。良美。遅れて。きっと分かってくれるだろう。今すぐ助けに行くから。)
鈴木警部補は多恵お婆ちゃんが息を引き取ると同時に医師や看護婦にも挨拶する隙もなく、真っ直ぐ早川町へと引き返した。
その道のりは車で1時間位だが、鈴木警部補にとっては、とても長く感じた。
(すまない。良美。きっと何処かで泣いている。)
鈴木警部補はすまない気持ちで一杯になった。
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