腐れ縁バーンアウト

@yacora

第1話 プロローグ


 

 たまたま家が隣で、親同士が仲が良かった。たまたま同じ時期に妊娠し、――-考えると少し気持ち悪い偶然だが――一週間違いでぼくたちはこの世に生を受けた。 

そう、ぼくたちの関係は偶然からはじまった。

 

 来栖あかり。そしてぼく、森中圭。

 

 ぼくたちは世に言う幼馴染というやつだ。

 

 幼馴染なんてろくなもんじゃない。

 小説やゲームの中では、幼馴染は特別な存在で、隣の家の可愛くて頭もいい美少女が毎朝「おはよ」なんて声をかけてくれたりなんてよくきくが、実際の幼馴染が全てそうかというともちろんそんなことは無い。

 良くある事だが、母親或いは父親が仲が良いからといって、子供同士が相性が良いかと言うとそれは普遍的ではない。

 逆に親同士が気を使いあって互いの子供を仲良くさせようとするあまり、当の子供達は何だかお膳立て通りになるどころか相手を疎ましく思ったりしぎくしゃくとしてしまう、なんてことがまま見られる。未熟な幼児のことであるから仕方ないのだが、そこは子供の自己中心的性質、相手を気遣うなどという処世術抜きの本音の付き合いをしていくうち、いつのまにかぎこちなさも消え兄弟の如き親しさ、悪く言えばずうずうしさを携えて日常となってゆく。

 それでも本当の兄弟でないという事実は消えず、血族で無いという違和感は年を重ねる毎に薄い膜のような影を二人の間に落す。

 ましてや異性なら、十を過ぎる頃にはその影はより暗く、より鮮明になっていくは必然の理というものである。

 そうしていつしか疎遠になり、

「あかりちゃん今度結婚するのよ」

「へえーあいつがねえ」

 久しぶりの帰省でそんなことを聞かされて少し感傷的になる。それが現実世界でいう一般的な幼馴染というものだ。

 ぼくとあかりも、まさにそういったありふれた幼馴染という鎖に縛られ―――年を重ねていくはずだった。でも。

 

森中圭。十五歳。

来栖あかり。十五歳。

 

 いまだにぼくたちはその鎖から解き放てないでいる。

 

 

 

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