第51話
わたしは山札の上からから黒いカードを引く。カードに印字された数字は⓿だ。
「…………」
既にお互いの伏せられた残りカードの数字はわかっている状況である。今更どのカードを引こうが、もはや勝負に関係ない。
「それじゃあ花屋君、覚悟はいい?」
「…………」
わたしは花屋のまだ明かされていない手札の、数字が大きい方のカードに狙いを定めた。
《花屋》
⓪②⑤❻●●⑪
⬆
「❿」
「正解ッ!!」
まずは一枚。これで花屋に残された伏せられたカードは、あと一枚となった。
《花屋》
⓪②⑤❻●❿⑪
「吉高、続けて攻撃」
わたしは迷わず残りカード、最後の一枚を指し示す。
「これでお終い」
「……ちょっと待った。吉高さん、この勝負、もうやめにしません?」
花屋が出し抜けに、そんなことを言ってきた。
「……は?」
「だって、もうこれ以上続ける意味がありませんよ。このゲーム、既にもう決着は付いているではありませんか」
「…………」
花屋のこの発言には、生徒会の躑躅森と馬酔木も困惑した様子で顔を見合わせている。
「……花屋君、それは君が降参するってことでいいのかな?」
私がそう確認すると、花屋は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をした。
「……ん? えーと、ちょっと意味がわからないんですけど。どうしてそれが僕が降参するって話になるんです?」
「……いや、だってそれは君がもう決着は付いているだなんて言うから」
「ええ、このギャンブル対決の決着は既に付いています。この勝負、僕の勝ちです」
花屋はそう言って、満面の笑みを浮かべた。
「……はァ!? いやいや、君、さっきまでのわたしの推理聞いてた? 君の最後のカードが❾だってことはもうわかってる。花屋君、君はギャンブルでわたしに負けたんだ」
「なるほど、そうですか。吉高さんは僕の最後のカードを❾と予想しているのですね。だったら僕の最後の一枚が何のカードなのか、実際に見てみましょう。カードは僕がオープンしますんで」
「…………」
わたしはもう一度、花屋の手札を注意深く確認する。
《花屋》
⓪②⑤❻●❿⑪
――瞬間、わたしの全身に悪寒が走った。
「……あッ、ちょっと待ったッ!!」
「……おや、吉高さん、どうされました? 最後の一枚を見ないのですか?」
「……もしかしてだけど花屋君、君、イカサマしようとしてない?」
「……何のことでしょう? それより、カードを開けますよ」
そう言いつつ、花屋が手札の最後の●を自らの手でオープンする。
《花屋》
⓪②⑤❻❻❿⑪
「……なッ!? 同色同数のカードが手札の中に二枚ッ!?」
「数字の❾は、逆さまにすれば❻になります。このカードは僕の気分次第で、❾にも❻にもどちらにもなることができる特別なカードなんです」
「……ば、馬鹿なッ!? そんなのインチキだッ!! 認められるわけがないッ!!」
「おやおや、吉高さん、そちらだってやっていることではありませんか」
「……何のことだ?」
「惚けないでください。三度目の攻撃に失敗した際、吉高さん、あなたは自分の手札に山札から引いた⑥のカードを加えたではありませんか」
《吉高》
❸③❹❺⑥◯●
「……それの何がインチキだってのよ!?」
「どうして山札から引いたのが⑥だとわかったのです?」
「……はァ?」
「カードに記されている数字だけでは⑥なのか⑨なのか、判断が付かない筈なのに、どうしてあなたは⑥だとわかったのですか? 答えは簡単。その方が、あなたにとって都合が良かったからです」
「…………」
《吉高》
❸③❹❺◯⑨●
「もしもあのとき、吉高さんが自分の手札に⑥ではなく⑨を加えていたら、折角僕に仕掛けた⓫のブラフが台無しになってしまいますからね。これでは僕を罠に嵌めて、僕の手札を読むことはできません」
「……だってそれは、山札から引いたのが⑥か⑨かなんて、誰にも判断がつかないじゃないかッ!!」
「その通り。このゲーム、『モノクロームカード』において、⑥⑨❻❾のカードはプレイヤーの都合のいいように解釈して構わないルールなのです。ただし、数字の並びに矛盾が生じない限りにおいて、ではありますが」
《花屋の初期手札》
⓪⑤❻❿
「僕の当初の作戦は、手札の❻を都合に合わせて❾にも変えられるように立ち回るというものでした。この状態なら、仮に吉高さんに右から二番目の●を❻と言われれば❾に、❾と言われれば❻にしても、並び順に矛盾は起きません」
《花屋》
⓪⑤❻❿
⓪⑤❾❿
「ですが、それは手札に❻~❿の間のカードない場合に限られます。山札から引いたカードに⑥❼⑦❽⑧❾⑨の何れかがあれば
《花屋》
⓪②⑤❻❾❿
「これにて僕の目論見は潰えたかに思われましたが、まだ終わってはいませんでした。躑躅森先輩のルール説明では、手札のカードは左から右に大きい数字の順番に並べなくてはならないとのことでした。ですが、同色同数のカードに関しては一言も言及されていません。ならば❻が手札の中に二枚あっても、ルールを破ったことにはならないのです」
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