第45話

 ――そして金曜日。決戦当日。


 放課後の生徒会室は、異様な雰囲気に包まれていた。


「まさか、生徒会からの最後の刺客が吉高さんだとはね」


 花屋友成は憎らしいまでにニヤニヤと余裕の笑みを浮かべていた。自分が負けることなど、露程も考えてはいない様子だ。


 わたしと花屋は二つの机をくっ付けた状態で、向かい合わせに座っている。そして机の横には、生徒会役員の躑躅森と馬酔木が二人並んで立っていた。


「……花屋君は相手がわたしでは不足?」


「いえいえ、とんでもありません。吉高さんがどんなギャンブルをするのか、今からとても楽しみですよ」


「…………」


 正直、決戦当日になっても、どうして躑躅森が花屋にわたしをぶつけたのか、わたし自身イマイチよく理解していなかった。普通に考えて、わたしなんかがギャンブル対決で花屋に勝てるわけがないではないか。


 だけど、こうして久しぶりに花屋の顔を見ていると、何だか無性に腹が立ってきた。


 人の気も知らないで、何が「今からとても楽しみですよ」だ。舐め腐りやがって。勝てるかどうかなんて関係ない。絶対に一泡吹かせてやる。


「……吉高さん、わかっているとは思うっすけど、この勝負、1000万円を賭けた大一番っす。くれぐれも軽率な行動は謹んでくださいっすよ」


 馬酔木が心配そうにわたしを見ていた。


「馬酔木さん、大丈夫です。安心してください。わたしだってそう易々と負けるつもりはないんで」


「それでは今回のギャンブル対決のゲームの説明を始める。ゲーム名、『モノクロームカード』」


 躑躅森が机の上に、数字の振られた白と黒のカードをそれぞれ一列ずつに並べた。


 ⓪①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪

 ⓿❶❷❸❹❺❻❼❽❾❿⓫


「御覧の通り、白と黒の0~11までの数字が振られたカードが一枚ずつある。この合計24枚のカードをよく切って、二人のプレイヤーにそれぞれ4枚ずつ裏返しの状態で配っていく。4枚の手札は左端が一番小さい数字で、右に行けば行く程、順番に大きな数字になっていくように並べていく。カードは裏の状態では何の数字が印字されているかはわからないが、白か黒かの何れの色かはわかるようになっている。手札以外の余ったカードは裏の状態で山札にし、そこから一枚カードを引いて、相手が持っているカードの数字を予想して当てていくというゲームだ。


 相手カードの数字を当てることに成功したら、当てられたカードは表向きにして、続けて相手カードを当てることができる。失敗したら山札から引いたカードを表向きの状態にし、数字の並びと矛盾しないようにして、自分の手札に加えなければならない。つまり、失敗すれば相手に自分の手札の数字を予想するヒントを与えることになる」


 なるほど。自分の手札が⓪❶④❺だった場合、山札から引いたカードが③だったなら、相手から見て◯●③◯●という並びになるわけだ。


「カードを交互に当て合って、先に相手の手札を全てオープンにした方の勝ちだ。ちなみに同じ数字のカードが手札に来た場合は、●の方が◯よりも小さい数字とする」


 つまり、数字の並び順は


 ❼<⑦<❽

 ②<❸<③


 ということだ。


「なるほど、早い話がこのゲーム、『アルゴ』ってことですね」


「違う。『モノクロームカード』だ」


 花屋の発言を、躑躅森が即座に訂正した。


 小出しにされていく情報から相手の手札を予想する、推理とひらめきが重要なゲームのようだ。


「ルールの説明は以上だ。それでは、さっそくゲームを開始する」

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