魔法騎士となり第二王女の護衛となったが親友が第一王女と共に戦争を仕掛けてきました

夜桜陽炎

第1話 夢を見つける

 魔法大国『オズワルド』魔法を絶対の力としているこの国はあらゆる事を魔法で片付ける。そんな魔法を扱う魔力量は産まれた頃から変化はしない。そのために産まれた子供の魔力量を測定するのが義務となっている。そんな国に新たな子供が3人産まれた。1人は国内最大量の魔力を持ち、1人は王位継承権を持った王女として相応しい莫大な魔力を、最後の1人は魔力量が人並みであった。


「この2人と同じ日に産まれるとは可哀想に」

「本当だよな。しかも、1人はフルール家の娘だぞ」

「おっ? フルール家か! 良かったじゃねぇか。先に産まれた娘は魔力がほぼ無いに等しい落ちこぼれで王位から転落するとまで言われたじゃねぇか」

「あったな〜そんな話も。残りのソール家とルーン家の対決になるとか言われたが分からなくなったな」


 医療関係者たちは仕事である魔力測定を終えて雑談する。


「さて、親御さんに返してあげないとな。全員丁重に扱えよ。2人のせいで霞んでいるだけで魔力量並であっても習得する魔法次第ではどうなるか分からんからな」

「了解」


 3人の赤子を丁重に送り届けるのであった。そして10年後、


「お〜す。今日の体調はどうだ?」

「見ての通りだよ。安静にしないといけないよ」


 金髪の元気な少年、ライガ・ルーツ。ベッドで寝て安静にしてるのは白髪のクウガ・オウリュウ。


「親御さんはどうした?」

「仕事だよ。お前の親だってそうだろ?」

「そうだけどよ。寝たきりの息子を放っておいてまで仕事に行くか? 普通」

「それがこの国の常識だろ。魔法が全て。魔法が使えない息子を心配する奴なんていない。例え血の繋がった息子でもな」


 遠い眼をするクウガ。クウガは国内最大量の魔力を持って産まれたが脳が魔力を放出するのを防ぐ体質であり魔法を使えない。これは100万人に1人がその体質を持って産まれる。おまけに発散されない魔力のせいで体調を崩しがちだ。これのせいでクウガは国内最大量の魔力を持っていながら落ちこぼれ扱いされて家族からも疎まれている。そんな中でも普通に接するのがライガだ。


「歪だよな〜。何でもかんでも魔法で決めるなんてよ〜。魔法使えない奴なんて毎年数10〜100人産まれてんのに。この調子だと人口減り過ぎて国が滅ぶんじゃねぇの?」


 ライガが言うように魔法大国であっても魔法が使えない者は毎年必ず産まれる。そうした人間を落ちこぼれ扱いした結果オズワルドの人口は減っていき落ちこぼれ扱いされた者たちによって大規模な集落が国の外に出来てしまうほどだ。


「滅ばないさ。あの女王様がいる限り」

「あ〜、あのバケモノババアな」

「女王様をバケモノババアなんて呼んだのがバレたら死刑だぞ」

「そうだけどアレはそう呼ぶしかないだろ?」

「気持ちは分からんでもない」


 現在、オズワルドの女王であるブルーム・フルールは60代後半で子供を2人産んでいるのだが20代と言われても信じるレベルのスタイル抜群の美女なのだ。


「不老不死の魔法でも使ってるんじゃないか?」

「ありえるな。もしそうだったらこの国が滅ぶ事はないだろうな。後継者の王女様もいるしな」

「そう! そうだよ! その後継者の王女様の誕生日パレードがあるんだよ!」


 そう言ってチラシを見せるライガ。見せられたクウガはチラシに目を通すと『第二王女、フロスト・フルールの10歳の誕生日』とデカデカと書かれており誕生日パレードを行うというものである。


「行こうぜ! クウガ!」

「この体調不良の俺がか? それに王女様は俺みたいな魔法を使えない落ちこぼれに祝って欲しくないだろうぜ」

「気にすんなって! 俺がおぶってやっから! それにお前が魔法を使えないのを王女様が知る訳ないって! 行こうぜ!」

「はぁ〜分かったよ。ただしおぶるのだけはやめろ」

「なんだよ〜俺の優しさじゃんか!」

「赤ちゃんじゃねぇんだよ」


 なんてくだらない会話をした明後日に誕生日パレードが行われた。


「うわっ! 人多いな! これじゃ王女様見れなくね?」

「当たり前だろ? この国の次期女王候補を見たい人間なんてごまんといる。諦めて帰ろうぜ」

「嫌だね。意地でも見てやる」


 そう言ってクウガを連れて高台に登る。


「ここならどうだ!」

「全員が近くで見たいから穴場になってるな」

「ちょっと遠いけど問題ないだろ?」

「そうだな」


 そう言ったクウガは王女に見惚れていた。


「ん? どうした? 乗り気じゃなかった割にお熱じゃん! まぁ、気持ちは分かるぜ! 魔法も使えて美少女と来たもんだ! 男ならお近づきになりたいよな!」

「あぁ。だから決めた」

「何を?」

「魔法騎士になる。魔法騎士になってあの人のために命をかける」


 クウガの顔は覚悟を決めたものだった。体調を崩しがちなクウガのやる気に満ちた顔に驚いた表情をするが、


「良いな! お前のそんな顔初めて見た! 応援するぜ! つーか俺もなる! 2人で魔法騎士になろう!」


 ライガも魔法騎士を目指す事を宣言する。


「取り敢えず魔法騎士になれるのは15歳。成人してからだ。それまで鍛える。魔法使える連中に遅れを取らないどころか凌駕するレベルまで鍛える」

「良いな良いな! そんなお前を凌駕してやる! そんで2人で最強の魔法騎士になって王宮勤めと行こうぜ!」


 そう言って肩を組むライガ。そこから2人の魔法騎士になるための特訓が始まった。そして5年後、


「さぁ、魔法騎士になろうぜ!」


 成長した2人は魔法騎士となるための試験を受けに王宮に向かうのであった。


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