第6話 止めるべきもの

第5話の続きになります。

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ギアとグラは一週間ほど、両親の帰りを待ち続けた。

しかし、帰ってこなかった。

グラはギルドへ行き、両親の行方を聞く。

「お姉さん。僕の両親がクエストを受けに行ってから一週間ほど帰ってこないのですが。」

 「キミ、なんていう名前?」

「グラ・カタロスです。」

その名前を聞いた瞬間、受付嬢のお姉さんは、驚き、涙を流していった。

 「悲しい…話だけど、あなたの両親は…クエストの途中で何者かに殺されたの…」

グラは耳を疑った。あのお母さんが、お父さんが死ぬはずがないと思っていた。

近隣でも両親がとても強いという話題は頻繁にあがっていた。

だから近所の大人は両親がいないときを狙ってギアを殺そうとしたのだと思った。

「わかり、ました。」


トボトボと歩いて帰る。必死に涙をこらえて。

ただ、ギアにそのまま伝えるわけにはいかない。ショックを受けるだろうから。

そして、両親が『強い』なんて嘘を言っていると思われたら嫌だから。

 「おかえり、お兄ちゃん!お母さん達は?」

「ギア。お母さん達はね、『事故に遭って』もう帰ってこれないって。」

 「え――。帰って、こな、いの?」

だんだん泣き出しそうになってくる。ギアはほぼ半泣き状態だ。

「ああ。もう帰ってこない。」

そう答えた瞬間、ギアは涙を流して泣いた。

グラもこらえていた涙があふれだして、二人して泣いた。

―ギアに味方する人が一人減ってしまったから。


そう。ギアを守る人が一人減ってしまった。だからギアを守るのはグラ、たった一人しかいなかった。

「お前だけは絶対に――失いたくない…!」

そう思った。絶対に失いたくない。守らなければならないと感じた。


―しかしその気持ちが強すぎて正しいことと間違っていることの区別がつかなくなった。

ギアが悪いことをしてもそれを止めようとはしなかった。

ギアの見方をしなければならない。ギアを守らなければいけない。

だから、どんなことがあってもギアを守る。味方をする。

そんな考え方になってしまった。


止めるべきものを、止められなかった。

裏クエストのことも、グラはギアから聞いていた。

それをクリアして能力をゲットすれば、強くなれると期待しているギアに味方した。

裏クエストなんて存在するわけない。だけど弟が言っているんだからあるんだろう。

そう思ってしまった。素直に思ったことを言えばよかった。

裏クエストなんていう噂は嘘だと、ギアを止めればよかった。


ギアはリアにボコボコにされ、捕まった。

しかし、グラは助けたいと思って脱獄させた。


そして復讐したいといった。

だから、ギアの望み通りにしてやろうと思った。


過保護すぎてしまったのだろうか。

――否。保護できていなかったのだ。


良いことと悪いことの区別ができるように保護できてなかった。

止めなければいけないものを止めれずなかった。

そして、ギアの心を保護できていなかった。


いつからか、ギアの心まで闇に染まっていたことに気づいてあげられなかった。

だから、二人とも死ぬことになった。

「俺は、止めるべきものを止められなかったんだ。」

グラは深く反省する。俺が間違っていたと。

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