第3話
幸せの森公園には、野外ライブが出来るステージがあり、其処では毎週日曜日に、アマチュアバンドによるライブが開かれていた。
だが今日は平日なので、其処には誰もいない。
駅前の道路には seseraと言うアマチュアバンドが立ってベースを弾きながら歌っている。
メンバーは3人だ。
メインボーカルの安住敬哉と冬木智、岸本太賀。男子ばかりで構成されている。
水曜日は聖佳のバイトが休みの日だ。
だから学校が終わった後、聖佳は真っ直ぐに此処に来ていた。
ベースの重厚な音から始まり、そこにボーカルの敬哉の声が入って来る。
敬哉は輝いていた。
もう眩しいぐらいに、ベースを弾きながら歌っている姿は言葉に出来ない程の輝きに満ちている。
その姿を見ているだけで、聖佳の中からいつの間にか恨み言は消えて、涙に変わっていた。
知らなかった……
これが本当の敬哉の世界だったなんて。
私と付き合っていた時、私はバイトを理由に、一度だって敬哉の歌を聴いた事がなかった。
敬哉はこんなにも歌う事が好きなのに。
その世界を知ろうともしなかった。
別れてから気付くなんて……
あなたの事。本当の安住敬哉。その姿も、
音楽も、その歌声も。バンドの仲間達の事も……
私は何も知らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます