何処かへ
警察から簡単に話を聞かれた後、私は解放された。寮に帰ろうか、そう思ったがなにか帰りたくないような気がした。結局私は渚の家に戻ることにした。
彼女の家、数時間前に彼女が手をおいていた机の上には一枚の手紙があった。
そこにはいじめとその苦しみが淡々と書き連ねられていた。具体的な名前は一つ燃えてこなかったが、わたしはそのいじめをした人に心当たりがあった。でも、その怒りよりも絶望がよっぽど大きくて、私はふらふらの状態で寮まで帰り、眠りについた。
目が覚めると、前日よりも少し気持ちが明るくなっているようだった。ふと、私の頭に一つのアクションが浮かぶ。そうだな、もういいだろう。私はあの展望台に向かって家を出た。
北風に鳥肌が立って目が覚めた心地がした。
「どうすればよかったんだ、凪沙。」
振り返る先では暗くなり始めた空が茜色をかき消していく。
夢、フィクション。もう私にはそれを確かめる必要はない。世界で一番綺麗な町並みに飲み込まれることが、彼女のいない世界との別れが、幸せだと願って。
目の前にある柵は私を止めるにはあまりにも低かった。
私の次の一歩が着地することはなかった。
夢現 白池 @Harushino
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます