人魚のお嬢様と狐の式神使い

未白

プロローグ


──これは、乃木国のぎこくに伝わる古い言い伝え。


 昔々、あるところに、重い病に伏した娘がおりました。

 娘を大切に思う夫婦は、どうかこの子を助けてほしいと、夜ごと神に祈りを捧げました。


 するとある晩、海の深くから、美しい人魚姫が現れたのです。

 人魚姫はやさしく微笑み、自らの血をひとしずく、夫婦に授けました。


 「これを娘に飲ませてください。きっと元気になりますよ」


 その言葉の通り、娘はたちまち元気を取り戻し、笑顔を見せるようになりました。

 やがて、娘の血にも、癒しの力が宿るようになりました。


 それ以来、人々は、奇跡の血を宿した者を

 “人魚”と呼ぶようになったのです。


 その血を受け継ぐ者は、時代を越えて、静かに生き続けてきました。


 

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