狂アニキのアニバーサリー!命日

志乃原七海

第1話。本日、お日柄もよく、ご冥福を「狂誕!撲殺天使ドクロアニキ」



【第一話:狂気の開幕!アニキ撲滅ロング・グッドバイ】


本編:


(場面:安西家の居間。朝6時、アラームがけたたましく鳴り響く。しかし、そのアラーム音は、童謡「ハッピーバースデー」を狂ったように高速再生したもの。)


(ベッドから飛び起きた健太(28)は、寝癖だらけの頭を掻きながら、悪態をつく。)


健太:「クソッ!誰がこんな時間にハッピーバースデーなんか聞きたいんだよ!…あぁ、そうか。今日は、クソアニキの誕生日、兼、撲滅記念日だったな」


(健太は、壁にかかったカレンダーに目をやる。カレンダーには、大きな文字で「アニキ撲滅記念日❤︎」と書かれ、周りにはハートマークとドクロマークが交互に描かれている。)


健太:「全く、縁起でもない日だ。けど、盛大に祝ってやらねぇとな。アニキの冥福を…とんでもない方法で!」


(健太は、冷蔵庫を開ける。中には、大量のビールと、賞味期限切れの牛乳、そして、なぜかドクロちゃんのフィギュアが鎮座している。)


健太:「朝からビールってのも悪くないけど、今日は特別な日だ。アニキの好物だった牛乳で、盛大にゲロってやろう!」


(健太は、賞味期限切れの牛乳を一気に飲み干す。案の定、すぐに吐き気を催し、洗面所に駆け込む。)


(洗面所でゲロゲロと吐きながら、健太は呟く。)


健太:「くそっ…アニキのせいで、体までボロボロだ…でも、今日は絶対に終わらせる!アニキ撲滅を!」


(場面:安西家のリビング。家族と親戚一同が集まっている。全員、喪服姿だが、顔には笑顔が浮かんでいる。)


母(60):「さあ、皆さん!今日は、待ちに待ったアニキ撲滅記念日です!盛大に祝って、光彦を成仏させましょう!」


父(65):「ああ、そうだ。今日は、光彦の誕生日でもある。だから、盛大に、盛大に、あの世に送ってやるんだ!」


親戚A(50):「光彦のせいで、私の人生はめちゃくちゃになったわ!だから、今日は思いっきり楽しむわよ!」


親戚B(40):「光彦のせいで、借金まみれになったんだ!今日は、その借りを返してやる!」


親戚C(30):「光彦のせいで、彼氏にフラれたんだ!今日は、盛大に恨みを晴らしてやる!」


(全員で、声を揃えて叫ぶ。)


全員:「アニキ撲滅!アニキ撲滅!アニキ撲滅!」


(場面:安西家の玄関。安西家の母が、警察と消防に送る声明文を読み上げている。)


母:「謹啓、警察署長殿、消防署長殿。本日、安西家一同は、アニキ撲滅記念日を祝うため、盛大に集団自決を執り行います。場所は、安西家の庭。時間は、午前10時。盛大に死にますので、ご期待ください。敬具 安西家一同」


(母は、声明文を警察と消防にFAXで送信する。)


(場面:警察署の一室。署長(55)が、声明文を読み終え、苦笑いを浮かべている。)


署長:「また、安西家か。今度は集団自決ときたか。全く、飽きさせない連中だ」


部下(30):「署長、どうしますか?本気でやるつもりでしょうか?」


署長:「まあ、いつものことだ。本気でやるなら、こんな声明文は送ってこないだろう。ただのパフォーマンスだよ。…しかし、念のため、現場へ急行するぞ。何かあってからでは遅いからな」


(警察官たちは、現場へ向かう準備を始める。)


(場面:消防署の一室。消防署長(50)が、声明文を読み終え、頭を抱えている。)


消防署長:「また、安西家か。今度は集団自決ときたか。全く、勘弁してくれ」


部下(25):「署長、どうしますか?救助の準備をしますか?」


消防署長:「いや、待て。これは、ただの騒ぎだ。本気で死ぬつもりなら、こんな声明文は送ってこないだろう。…しかし、念のため、出動準備はしておけ。何かあってからでは遅いからな」


(消防隊員たちは、出動準備を始める。)


(場面:安西家の庭。安西家の人々は、集団自決の準備を進めている。)


(母は、絞殺ロープを丁寧に点検している。)


母:「このロープは、特別なものなの。光彦の好きなブランドのシルクで作られているのよ」


(父は、遺書を読み返している。)


父:「遺書には、光彦への恨み辛みをたっぷり書いた。これで、光彦も成仏できるだろう」


(親戚Aは、毒入りのケーキを飾り付けている。)


親戚A:「このケーキは、光彦の好物だったチョコレートケーキ。でも、毒をたっぷり入れたから、きっと苦い味がするわ」


(親戚Bは、拳銃を磨いている。)


親戚B:「光彦のせいで、人生が狂ったんだ。だから、拳銃で、光彦を撃ち殺してやる!」


(親戚Cは、ガソリンを撒き散らしている。)


親戚C:「光彦のせいで、彼氏にフラれたんだ。だから、ガソリンで、全てを燃やしてやる!」


(健太は、複雑な表情で、その光景を見つめている。)


健太:「本当に、これでいいのか?みんなで死ぬなんて…」


(その時、安西家のインターホンが鳴り響く。)


(安西家の母が、インターホンに出る。)


母:「どちら様ですか?」


(インターホンの向こうから、陽気な声が聞こえる。)


???:「宅急便でーす!アニキ撲滅記念日おめでとうございまーす!」


(安西家の母は、不審に思いながらも、玄関のドアを開ける。)


(ドアを開けた先にいたのは、ドクロちゃんのコスプレをした男だった。)


ドクロ男:「アニキ撲滅記念日、おめでとうございまーす!アニキからのプレゼントでーす!」


(ドクロ男は、健太に近づき、プレゼントを渡す。)


(健太は、ドクロ男からプレゼントを受け取る。プレゼントの中には、ドクロちゃんのフィギュアと、一枚のメッセージカードが入っていた。)


(メッセージカードには、手書きでこう書かれていた。)


「健太へ。誕生日おめでとう。お前を、ずっと見ているぞ。光彦より」


(メッセージカードを読み終えた健太は、背筋が凍りつく。アニキの気配を感じ、恐怖に震え始める。)


(場面:安西家の庭。健太は、ドクロちゃんのフィギュアを握りしめ、空を見上げる。)


健太:「アニキ…!本当に、生きているのか…?まさか、あの世から蘇ったのか…?」


(空には、不気味な笑い声が響き渡る。)


(場面暗転)


(エンドロール:ドクロちゃんのテーマソングが、狂ったようなアレンジで流れる。)


【第一話:完】


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る