いやはや……
まさかそんなところに伏線があったとは思いませんでしたな。
してやられました。
丁寧で重厚。そして随所まで計算し尽くされているのだと思います。
その図書館は、一般家庭のリビングよりも少し大きいサイズの図書館。しかし、
本の密度が厚い。
そして、何より図書カードも要らず、「置いてある本は好きに持っていっていい」のだそうだ。
なんでそんなことが罷り通るのかというと、「新月になったら本が戻ってくるから」なのだという。
もちろんそこは信じられない主人公であったが、司書さんがそう言うので本を借りていくと、本当に新月になったら主人公の元から借りた本が消えており、
勝手に図書館に本が戻っていた。
なぜ? どうやって?
そして……司書さんの正体は?
最後にとんでもない謎までぶっ込んできます! これは面白い!!
少し長めですが、ミステリー好きは刺さること間違い無いです。
是非、ご一読を。
本作の主人公は、本が大好きすぎて図書館の返却期限をつい忘れてしまう文芸部女子。ついには一か月、貸し出し禁止の刑を言い渡されてしまいます。落ち込む彼女のもとに舞い込んだのは、友人からの思いがけない情報――高級住宅街の一角に、返却期限になると、本が自ら戻っていくという謎の図書館があるというのです。
半信半疑ながらその図書館へ向かう彼女。果たして、そんな不思議な場所が本当に存在するのか? 普通に考えれば、構造物として存在していながら、世間にほとんど知られていない図書館というのは矛盾を孕んでいるはず。しかし、住宅街に自然に溶け込み、人々の目をすり抜けて佇むその図書館の描写には、「もしかしたら、あるかもしれない」と思わせる説得力がありました。まるで知られざる名店を見つけたときのような感覚。絶妙なリアリティラインを攻めて来ていました。
謎の図書館に入ってしまえば、こっちのものですね。返却日になると本が勝手に帰っていくという事象をSFらしい切り口で物語へと落とし込んでいました。
この作品で特に印象に残ったのは、後編の冒頭にある一節です。主人公が借りてきた本に没頭して思いを馳せる部分。若いながらも文学を愛していることが伝わってきて、その純粋さに非常に好感がありました。
そして、この謎の図書館にまつわる、さらなる謎。その秘密は、ぜひ本作を読んで確かめてみてください。どこか現実と地続きで、少し不思議(SF)なファンタジーでした。おすすめです!
終盤で明かされる真相で、「おお!」となりました。
発想がとにかく面白いです。
図書館に伝わっている「ある噂」。それは、「返却期限が来ると、借りた本が自動的に図書館へ返って行く」というもの。
なので、延滞は絶対に発生しない。借りたままどこかへフェードアウトされることもない。
これは結構便利というか、未来の図書館でこういうものが出来たらいい、と思わせるものでもありますね。
本編はまず雰囲気がいい。図書館が持つ、静謐で、どこかホッとする感じ。そんな不思議な図書館に行き、「トキコさん」という落ち着いた雰囲気の司書の女性に会う。
とにかく、「物語が始まりそう」な昂揚感がある。それがなんとも良い。
その上で提示される「答え」。一体、「この図書館」の正体はなんなのか。
幻想的な雰囲気、日常と地続きにあるようなファンタジックな空気。そういう感覚に読者を馴染ませてからの「この真相」は、心地よい驚きを与えてくれました。
「この設定の図書館」だけで、もっと掘り下げて話を作れるんじゃないか。そんな魅力も感じられる一作です。
トキコさんはどんな人生を歩んできたんだろう。もっと話を聞いてみたい。そして、「ここの本に落書きしたり破ったりしたらどうなるんだろう」とかの好奇心も刺激される。
図書館だからこそ、たくさんの物語が眠っていそう。そんなポテンシャルも感じさせられる作品でした。