スペシャルサンクスは誰のもの?
「私は神様の身勝手さについて思う事はないよ。だってそれが神様なんだもん」
ここは売布神社という場所だった。
「ふむ……怒らぬのか」
そこでは少女と大学生ぐらいの女性が会話をしていた
「結局さ、楓ちゃんは死んじゃったし私も死んじゃった。けれどもね、それでよかったと思う」
「ほう、どうしてじゃ?」
「私は楓ちゃんの妹と、その彼氏君。彼らに本当の意味で救われたんだからさ」
「おぬしはもう霊体じゃ。現世で生きる事は叶わぬのだぞ」
「ううん、そういう事じゃないよ。“神宮 紬”ちゃん」
「バレておったか」
「賽銭を要求する神様なんて、がめついが過ぎるよ」
「不況も不況、ワシもいつまで現世におられるか分からぬ」
「高天原にでも行くの?」
「そうじゃな、なんとか実態を保つために、天国でせっせと働くかの」
「私も連れてってよ」
「だーめーじゃ。まず裁判を受けい。十中八九、地獄行きじゃろうが、情状酌量の余地はある。其の時は会いに来い」
「……うん、そうするよ。って何の話をしてたんだっけ」
「死んだのに救われた、とか言うてる所じゃ。意味が分からん。それに……ワシの気持ちはどうなる」
「こうしないと会えなかったんじゃないの?」
「そんな事はない。実際、お主の中学にワシはいた」
「助けてくれたら良かったのに」
「……ワシの裁量の問題じゃ。ワシにできたのは未来への投資だけじゃ」
「そっか。なら仕方ないね。大丈夫、ちゃんと受け取ったよ。あなたが一番面白い子だったもん」
「なんじゃ! 笑うでない!」
「……紬の花言葉は、変わらない愛」
「それがなんじゃ」
「救われた私がいる」
「……ノーコメントじゃ」
「ふふっいいよ別に。でもね、あなたの愛がなければ私はただ死ぬだけだった。腐って、母の異常性に触れて、精神を汚して。世界を呪って死ぬだけだった」
「そうじゃな。だから、お主はここで死んだ」
「それは、そうだね……。けれどもね、紬ちゃん。私はどこまでも恵まれていたらしいんだ。ガール……ううん、林檎ちゃんの楓ちゃんに対する愛に触れて、彼のガールに対する愛に触れて、いなせちゃんの彼に対する愛に触れて、それでね、ありすの愛に触れて」
「……」
「私は彼らに送るよ。とびっきりの、スペシャルサンクスを」
君たちみんなが主人公だったよ。
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