曇天
テストの週をなんなくこなし、土日を挟んでテスト返しの日がやってきた。この日はいつも活気があった。結果に一喜一憂するもの、競い合っているもの、そしてその活気に当てられて妙に自分の点数が気になりだす者。私はというと、そのどれでもなかった。私はこの日が好きだった。授業の時間にテスト返しが行われ、授業時間自体が短くなるからである。それに、ぼんやりと三者三様な彼らの姿を見ることが、窓から流れてくる初夏の風を感じることが、そのうちやってくる夏を思わせて、青春的だったから。しかしその日は曇天であった。なんとなく、テスト前に見た白衣の彼女がまた何かやっているのではないか、やっていたら魔法って何ですかって聞いてみようか。とか、そんな少し小躍り気味で菰池周辺を見回っていたため、学校の到着は始業ギリギリの時間になっていた。私が違和感を覚えたのは教室に入ってすぐの時であった。
「クスクス……」
教室の端から笑い声が聞こえた。私に向けられたものではないと思っていたが、どうやらそれは違っていたらしい。私を皆が見ていた。憐れむような眼、好機の視線、何か重大な事をしてしまったような、そんな罪悪感の目線。私は一心にそれらを引き取らされているように感じた。
「今日は遅かったね、六分儀さん。ああ、大丈夫、遅刻じゃないよ。けど、今からHRを始めるから席について」
担任の男性教師はなんとも思わなかったのか、私が席に座るよう促す。
「はい」
私は促されるままに一番右奥の、窓側の席に座った。空は夜のように真っ暗になっていた。
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