フランスから遥か異国へと運命に導かれた女性・エーメ(ナクシデイル)の、静かで強い生きざまを描いた美しい物語です。
異文化の中で戸惑いながらもたくましく適応し、母として、ひとりの女性として、心を尽くしてゆく姿がとても印象的でした。
セリム皇帝やアフメト皇子との関係には切なさと温かさがあり、読んでいて胸がじんわり。
日常の中にさりげなく織り込まれた料理や風景の描写も豊かで、まるでトプカプ宮殿を訪れているかのような気持ちになります。
歴史の波に翻弄されながらも、優しさを失わず生きる彼女の姿に、心がそっと寄り添うような作品です。