第3話


自分の部屋から出た事がないから、どんな所に住んでいるのかは分からない。


唯一、分かるのは、ベランダに出ると、広い庭が見えると言う事。


そして、9月中旬になれば、広い庭全体に曼珠沙華が咲くと言う事。


世間では、彼岸花と呼ばれている曼珠沙華には、沢山の別名がある。



死人花しびとばな


幽霊花ゆうれいばな


地獄花じごくばな


毒花どくばな


痺れるしびればな


天蓋花てんがいばな


狐乗の松明きつねのたいまつ


狐花きつねばな



全て、琥珀が教えてくれた事。


殆ど部屋の中で、1人で過ごす日々。


『琥珀からだ』と言って、永遠から受け取るのは、書籍と刺繡糸。


学校に行っていた記憶がないけど、ひらがななら読める。


それに、書籍の中の漢字には、ふりがなが書いてあるから読む事に困らない。


毎日、毎日、書籍を読む事と刺繍をして時を過ごす。


此処には、テレビもない。


ましてや、携帯も持たない私は、世間で何が起きているのかを知らない。



孤独だとは、思わない。


淋しいとかも、思わない。



そんな私は、過去に感情を置いてきたんだと思う。


それは、あくまでも、私の勝手な推測。

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