少年

藍香【主に SF ファンタジー小説】

【Ⅰ】

第1話

【Ⅰ】

1


夕陽に染まる白樺林の中に、その少年は佇んでいた。


少年が一日中そうやって同じ場所に居たことを知っていたのはキムだけだろうか。


「青巻き紙、赤巻き紙、黄巻き紙

魔術師魔術修行中

家のつるべは潰れぬつるべ、隣のつるべは潰れるつるべ

カエルぴょこぴょ…………」


アカネ:「キム…………何見てんの?…………」


アカネはキムの親友である。


キム:「あの子さぁ…

今日午前中からずっとあそこに居るんだけど…………」


「えぇ~!?どこどこ?」


演劇部の仲間達が、キムの居る窓際に駆け寄った。


アカネ:「あの白樺林の?」


キム:「うん………朝から」


サキ:「うっそ~!

ストーカー? 誰か狙われてんじゃない?! こわこわ!」


キム:「いやぁ、そういう感じでもないんだよね………

体育の授業だけ見てるようでもあるし………

ほら、今だってサッカー部の動きに集中してるみたいでしょ」


アカネ:「ほんとだ…………

けっこう真剣に見てるようでもあるな……」


キム:「ここから見た感じは中学生ぐらいだよね」


アカネ:「うん………制服っぽいし……」


マリコ:「何処の制服?」


サキ:「遠くて分かんないよ!」


アカネ:「紺のブレザーみたいだから私立中かな?……」


マリコ:「この辺の私立中であんなブレザー見かけないけど………」


アカネ:「まっ、暇なんじゃない?!

休校になったのかサボったのか知らないけど、今のところ害は無さそうだし我々には関係無い!


我々が今成すべきことは『演劇発表会』の練習でしょ!

もう時間無いよ!

さぁさぁ練習練習!」


            つづく


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