1章 神の大陸

第2話 マンバ爆誕

「ありゃ? ここは?」

「たしかボケ神の奴、地球から追放とか……ふんっ過酷な世界へ追放じゃったか?」


 スッキリとした寝起きのように、非常に気分が良い山姥。

 辺りは巨木が茂り、木漏れ日に爽やかな風が吹き抜けて行きます。

 思わず笑みと共に両手を天に向け、伸びをする山姥でした。


「過酷な世界とは思えん、のどかなもんじゃ無いか! ………?」


「ありゃりゃ? 声が変! なんじゃこりゃぁ!!」

 手足を確認して結論に至りました。

「子供になって居る?」


「……」「……」「まっ良いか! ババアの身体よりなんぼかましじゃ! どんな顔か見てみたいもんじゃ……髪の毛は? バテレンの金髪ぅ?」


「手とか腕が異様に白い、それに金髪じゃ今のわしはエゲレス人か? サイの河原の鬼どもとの雑談で、何と言って居ったか……おぅ白人じゃった」


 500年の浄化刑、河原の鬼どもとの雑談は退屈しのぎと言うか、鬼どものお陰で耐える事が出来たようなものでした。


 刻々と変わって行く戦国の世、徳川300年の武士による泰平の世、明治維新に日清日露の戦い、日露戦争の10年後の世界大戦、ここまでは日本は勝ち戦、その後昭和の壊滅的敗戦、平成に令和、結構話好きな鬼どもから聞いて、豊富な知識を得る事ができた山姥でした。


「白人か、ぐふふっ今わしは、お人形さんみたいに可愛いはずじゃ! 照れるのぅ」


 その時、かすかに悲鳴が聞こえてきたような。

「ふん? こっちの方角じゃな」

「この世界の探索、行ってみるか」

 辺りを見回しながら、ぶらぶら歩く山姥です。


 其ほど時間を掛けず、雑多な草が生えた広場にたどり着きました。


 最初に見えたのは広場の端の方で、大きな犬が低く唸り声をはなって居る姿でした。

「でかい犬じゃな、馬よりでかい」


 対するように、10代中頃に見える男が、必死の形相で剣を振り回していました。

「何じゃ、たかが犬コロに必死こいて」


「こりゃぁ! 犬コロ! お座り!! 伏せ! 服従!!」


(狼なんですけど……)

 不服そうな狼は、それでも、お座りから伏せになり、命令通りお腹を上に向け服従のポーズをとって居ます。


 わしは、犬コロの腹をなぜながら、男を見た。

「んっ? こすけ? 小助ぇ!!!」

 男は、遥か昔に別れた孫の小助そっくりです。

「マンバちゃん……あれ? 怪我を? あれれ?? 動け無い位の怪我を……してたよね?」

「小助ボケるな! わしはピンピンして居る!」

「それより、お前の方が酷い怪我じゃ! ちょっと動くな!!」

 辺りを見渡し、適当な草をむしり、モミモミ、グチャグチャになった草を小助の傷に塗りつけると。

「あれれ? マンバちゃん何これ? 傷が治った??」

「マンバか……そう名乗るのも良いな」


「マンバちゃん、お兄ちゃんはキスケだよ」

「………で、小助状況を説明しろ!」

「無視かよ! お兄ちゃん悲しいよ、マンバちゃん」


 どうやらこの世界では、小助はわしのあにさんのようじゃな。

「小助状況説明!」


 200年の山姥暮らしに500年間浄化に耐えた、通算760歳の妖怪山姥は、人の話など聞く耳持たぬ、恐い者の無い山姥です、思うがまま自由気ままに生きて来て、この世界でも生き方を変える気は更々有りません。



 死んだかと思った妹のマンバが無事だった!

 マンバの話し方、雰囲気がまるで違う?

 恐ろしい化け物、シルバーウルフを苦もなく手懐けたり、大怪我を一瞬で治療するし、

 何か変だなと思いながら、キスケは可愛い妹に状況を説明するのでした。



「父様と母様は囚われて居る、今非常に危険な状態に有ると言う事じゃな」

「簡潔過ぎる言い方だけど、概ねその通り」

「それなら大急ぎ救助に向かう、で良いな!」

「マンバちゃん子供が二人で行っても捕まるだけだよ」

「問題無しじゃ! 犬コロ共が居る」


「おい犬コロ、お前に名を授ける、コロじゃ!!」

(狼なんです……もうどうでも良いやコロ……ね、了解っす)


「野犬は群れるもの、コロ仲間を呼べ!!」

(ハイハイっす)

「ワオォォォン」

 腹に響くコロの遠吠えです。

 達処に返答の吠え声が聞こえて来ます。

「「「ワオォ」」」

 巨大なコロよりわずかに小さい、それでも地球の馬並のデカイ犬コロが3匹やって来ました。


「んーと……尻尾の先が黒いお前名はヤンな、そこの尻尾先の白い奴お前はニンな、最後の少し太い奴、お前はトンだぞ」

「「「ウォン」」」

 尻尾を振って返事をしてる、気に入ったようじゃ。


「小助はトンに乗れ」

「わしはコロに乗って先に行く」


「小助落ちんように確り掴まれ!」

「マンバちゃん、本当に二人で行くの?」


「小助はトンと離れた処で見ておれ」

「わし一人で充分じゃ、皆行くぞ!!!」


 両親と言われても知らない人、実感の湧かないマンバは、気楽に救助に向かうのでした。

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